計5つの検討案から「第3案」を選択

幼保一体化・こども園法案で政府方針固まる

国会提出は6月予定、成立の可能性は五分五分

2011年1月31日
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菅直人首相

菅直人首相は演説のたびにこども園構想を持ち出し、「幼保一体のこども園ができれば母親の雇用が増え、保育現場での雇用も増える。ダブル効果だ」と繰り返す。首相の頭には母親動員の労働政策しかなく、子どもの人権や幼児教育充実の意識はない。

与謝野馨経済財政担当大臣

菅内閣で少子化対策担当大臣として子ども・子育て新システム検討会議の共同議長になった与謝野馨経済財政担当大臣。同氏の存在が、こども園法案成立の火だねになる可能性も大きい。元文部大臣、元通産大臣、衆議院議員(東京都比例区)。

★幼稚園とこども園の二元体制を想定
 2011年1月24日(月)、政府の子ども・子育て新システム検討会議は「幼保一体化・こども園」に関する法案作成の最終基本方針を、同日開かれた幼保一体化ワーキングチーム(WT)第6回会合に提示した。
 学識経験者、現場関係者らによる同WTは昨年11月から、こども園について5つの案を検討していたが、政府が選択したのは第3案。それは認定こども園に代わる新たな「こども園」を立ち上げるが、幼稚園、保育所の制度は残し、三つの制度が併存する形である。WTでの議論は意見の溝が埋まらず、ひとつの案に絞り込むには時間がかかると見られていたが、国会への法案提出時期を考え、比較的反対の少ない案で見切り発車した格好だ。
 「幼稚園・保育所・こども園という形なら、認定こども園を含めて三者が存在する現状と変わらないのじゃないか」と思う人も多いだろうが、中身はかなり違っている。主な変更点は以下のとおりだ。

①保育所として残るのは0~2歳を対象とする乳児保育所だけとなり、3~5歳を受け入れる保育所は強制的にこども園となる。これは小学校入学前の学校教育を幼稚園以外の子ども達も受けられるよう、こども園を学校教育法第1条校に位置づけるためである。つまり3~5歳の幼児教育については、現在の幼・保二元制度が「幼稚園・こども園」の二元制度になることを想定している。

②認定こども園は強制的に新こども園に移行する。現状の認定こども園は幼稚園・保育所を基盤とした制度上の存在で実体があるわけではないが、法案が通ると地方裁量型の公立の認定こども園と同じ独立した存在となる。それは、認定こども園となっている幼稚園、保育所が自動的に本来の看板を失うことでもある。

③補助金は「幼保一体給付」に一本化され、市町村を通じて幼稚園、保育所、こども園に給付される。この補助金は園児保護者に対する個人給付が基本だが、それを幼稚園、保育所、こども園が代わりに受け取って運営費用とする(法定代理受領方式)。

★「私学助成廃止」などの誤報に惑わされるな
 そのほか入園希望者の「応諾義務」や保育料の「公定価額」についての規定も盛り込まれる見込みだが、状況・内容によって幅を持たせるとなっているので私立幼稚園の運営に大きな影響を与えることはないと言える。
 と、これらのことは各種メディアで大きく取り上げられたので幼稚園関係者は周知のことと思うが、その報道の仕方があたかも「この内容で決定した。2013年度から実施される」と伝えられているため、一部に誤解や動揺を与えている向きがある。理解してほしいのは、これはあくまで法案を作るための基本方針であって、もし法案が成立したときには「そのような形になる」予定というものである。
 また基本方針では「幼稚園についても財政的インセンティブによって、こども園への移行を促進する」となっている。財政的インセンティブとは「補助金による優遇措置」であるが、逆の見方をすれば「補助金による制裁措置」である。
 このことに関連して一部メディアが「幼稚園への私学助成は廃止へ」との誤った情報を流した(1月27日共同通信)。これは本筋で違う。仮に法案が通った場合でも、私学助成は幼保一体給付に合流して交付されるので、私立幼稚園に対する補助金が廃止されるわけではない。逆に政府方針は「格差のない財政措置」を謳っているので、私立幼稚園については補助金が増えることはあっても減ることはないと読みとるべきものである。
 こうした誤報が出るのは、政府方針で幼稚園制度が残ったことに反発する一部の民主党議員グループが、私立幼稚園を揺さぶるために意図的に情報を操作しているとも想像できる。
 ともあれこれらの情報は、まだまだ中身が固まったものではなく、これから法案をつくって国会に提出して審議するものだ、ということをよく認識しておいてほしい。

★与野党の取引法案となる可能性も
 その国会提出は、当初スケジュールの3月から6月にずれ込むことになった。「基本制度」「幼保一体化」「こども指針」の三つのWTでの意見集約がむずかしく、法案とりまとめに時間がかかると政府側が判断したためだ。そうなると通常国会終盤に提出して継続審議とし、実質審議は秋の臨時国会になると見込まれる。しかし政局が安定しない状況なので成立への見通しは何とも言えない。
 一方で政府方針の裏には、反対の強い幼稚園をとりあえず口封じし、大半の保育所をこども園に移行させることによって、自公政権当時に取りまとめた「保育制度改革」を実行しようという意図がある。実際、幼稚園制度が維持され補助金が増えるということなので、私立幼稚園としても大きな声で反対しにくい状況になったのは事実である。
 しかも見かけは、子育てをしやすい制度にしようという国民受けするものなので、与党にとっても、自民党、公明党にとっても他の法案を成立させるための取引法案として使いやすいものになった感がある。その結果、日本の幼児教育を破壊する時限爆弾を抱えた「幼保一体化・こども園」法案が、意外にスルっと成立する可能性も否定できない。ねじれ国会の中でそれらを勘案すると、法案が成立する可能性は今のところ五分五分と言えよう。
幼稚園情報センター・片岡 進