学校教育全体を揺るがす問題だから

中教審でも活発化する「幼保一体化」の議論

「0〜2歳は保育所、3〜5歳は幼稚園」の抜本改革論も

2011年3月7日

★積極推進派と慎重検証派が
 このところ中央教育審議会(初等中等教育分科会)では「幼保一体化」が議題になることが多い。中高一貫、教員免許、学級定員などの議題は文科省担当官の説明や報告で終わることも多いが、「幼保一体化」に議題が移ると次々に発言の手が上がる。
 それだけ委員の関心が高いわけだが、その理由のひとつは、学校教育、人間教育のスタートは幼児教育にあるのだから、そこがどう変わるかによって小学校、中学校はもちろん大学にまで影響を及ぼすことになるという中教審としての当然の認識である。
 もうひとつは、そうした教育の根幹に関わる大きな問題であるのに、中教審をパスして「こども園法案」を通そうとしている民主党の政治手法に対する危惧である。実際、この問題で民主党の人たちが「これはあくまで経済対策、労働政策の制度改革だ」と主張するのは、「へたに教育論議に巻き込まれて自分たちが目指す形が変えられては困る」という思惑があるからだろう。
 そこで中教審は「我々を抜きにして教育制度改革を勝手に進めては困るよ」とアピールしているわけだが、そうはいっても委員の考え方はさまざまだ。
 「ほとんどの親は教育の観点で幼稚園と保育園を選んでいるわけではない。給食があるかどうか、時間が長いか短いかの違いしか考えていない。だからまずは制度を一本化してから教育の中身を考えればいい」「閣議決定があり、基本制度要綱案が出た段階で自治体は既定事実として準備を始めている。それが中身がブレたり先送りされたのでは自治体のモチベーションが下がってしまう」と、やや乱暴とも言える積極推進論がまず出てくる。
 一方では「うちの市ではすでに6年前から公立の施設を合体させて幼保一体化を行ってきた。その結果、幼稚園の教師は、以前はできた教材準備、活動記録、職員研修の時間がとれなくなったと嘆いている。教育機能を喪失することにもなりかねない安易な一体化は進めるべきでなかったと反省している」「今の幼稚園教育、認定こども園制度に問題があるのなら、まずその検証と議論から始めるべきだ」という疑問論や慎重論もある。

★元日教組書記長の抜本改革論
 こうした中、「民主党のこども園構想ではますます複雑になって、対応する自治体も大変だ。誰にもわかりやすい制度にするには、たとえば0〜2歳は保育所、3〜5歳は幼稚園とする抜本的な改革をこの機会に考えるべきだ。二元的ではあっても、これなら子どもも親もすべて平等になる。幼児教育を拡大充実して予算をつけていけば、OECDで最低の教育財政も改善していくことができる」という意見を述べる委員がいる。日教組書記長として知られた渡久山長輝氏(財団法人全国退職教職員生きがい支援協会理事長)だ。
 当幼稚園情報センターが一貫して提案しているテーマであり、ドイツが実践している姿であり、また私立幼稚園関係者の多くが30年以上前から「子ども達にとってこれが理想」と願っていることを、元日教組書記長が中教審で堂々と主張してくれているのである。
 せっかくの理想なのに、「そんなことを言い出しても、保育所の人達が猛反発するので議論にならない。詮なきこと」と思って幼稚園関係者はあまり言わない。たしかに保育所経営者は反発するし、その考え方が広がるのを恐れているが、現場の保育士の多くは年齢区分を求めている。2歳までを受け入れる乳児保育所の落ち着いた雰囲気と保育士達の穏やかな表情がそれを裏付けている。
 密室でこっそりまとめた結論を押しつける民主党的な強権政治はもう通用しない。国民的議論がわき起こった時にこそ改革が生まれる。そのためにも私立幼稚園関係者は、反発を恐れず理想の旗を掲げ続けてほしい。そして渡久山委員、北條泰雅委員(全日私幼連副会長)を中心に中教審での議論を盛り上げてもらいたいものである。

※幼稚園情報センターはこれまで、「こども園構想」に対する考え方と「年齢区分・保幼連結構想」の提案をA4判2枚にまとめて関係方面に働きかけてきたが、その最新版(ver.6)を添付するので参考にしていただければありがたい。

(添付資料)
※こども園構想に対する考え方と提案(PDFファイル
幼稚園情報センター・片岡 進