甲府で全日私幼連の関東地区大会

ワークライフバランスの議論に集中しよう

「生きる喜びと希望」育てる労働環境を

2011年9月6日
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田中雅道(たなかがどう)

田中雅道(たなかがどう)
(財)全日本私立幼稚園幼児教育研究機構理事長。京都市・光明幼稚園園長。元・全日私幼連副会長。

加藤繁美(かとうしげみ)

加藤繁美(かとうしげみ)
山梨大学教育人間科学部教授。1954年生まれ広島県出身。「対話的保育カリキュラム」「子どもと歩けばおもしろい」など著書多数。

全体会では山梨県が誇る全国トップの富士学苑中学高校ジャズオーケストラの演奏もあった。

全体会では山梨県が誇る全国トップの富士学苑中学高校ジャズオーケストラの演奏もあった。

★小手先の制度論に終始した「こども園構想」
全日本私立幼稚園連合会(香川敬会長)の教育研究大会は各地区ごとに行われるが、そのひとつであって最大規模となる関東地区(石嶋昇会長=栃木県会長)の第26回大会が、8月18・19日、(社)山梨県私立幼稚園協会(鈴木信行理事長)の実施で甲府市で開催された。
大会テーマは「幼児教育の成果を社会に示そう〜子どもに夢を、未来に希望を〜」。全体会が山梨県立県民文化ホール(コラニー文化ホール)、計15のフォーラム(分科会)は山梨学院大学を会場に行われ、中身の濃い私立幼稚園教育を社会にアピールしていこうと議論が交わされた。
香川会長に代わって全体会で挨拶した(財)全日私幼研究機構の田中雅道理事長(京都府・光明幼稚園)は、東日本大震災の実情と経過を述べた後、民主党政権の「こども園構想」について次のように述べた。
「議論を重ねてきたが、幼児教育の本質、日本の教育の方向性という肝心なことがまったく議論されず、小手先の制度論に終始してきたのが現実です。この問題では公教育(学校教育)と私教育(家庭教育)の役割分担を明確にすることが必要で、すべての子どもを0歳から学校教育に組み込み、どれも同じ中身の施設にして選択の必要性をなくせばいい、と考えるのは幼児教育に対する認識があまりにも低い。ただ、幼児教育の公共性とは何か、税金はどう使われるべきか、という議論が深められたことの意味はあった。今後も粘り強く、幼児教育とは何なのかという視点での議論に切り替えていきたい」と。

★今必要な労働政策は週35時間労働
基調講演は山梨大学の加藤繁美教授。例によって息をつかせぬ語り口で「希望の保育実践論」を唸った。その一部を紹介しよう。
「子どもは毎日、自分たちの願いと計画に取り組んで一生懸命に生きている。先生たちはその願いをしっかり受け止め支えている。それが幼稚園の世界です。この子どもの一生懸命さを自分たちだけの世界にとどめず、もっと広く、政治家の人々にも伝えていくことが望まれています。そうしないと幼稚園教育が埋没してしまうからです」
「今の保育を充実、継続していくことができればいいのですが、それができない状況が迫っています。1990年頃から顕在化してきた社会の地殻変動です。ひとつは地域、家庭、親子関係の変化で、その結果、学級崩壊が始まり、児童虐待が激増しました」
「もうひとつは労働政策、家族政策、女性政策の転換で、この20年間は保育所の整備と制度改革に終始し、幼稚園も組み込まれてきました。男も女も自分の能力を生かして仕事をする状況は社会の前進であり、もはや引き返すことのできない大きな流れです。しかし従来の労働条件を引きずったままきたところにミスがありました。親も疲れ、保育者も疲れ、子どもも疲れる疲弊した子育てになってしまったのです」
「今の流れをつくる前に労働時間を週35時間に短縮すべきでした。そうすれば大半の子どもは幼稚園の預かり保育で対応でき、親も子もゆとりある生活を過ごすことができるのです。今からでも始めるべきです。私立幼稚園は懐古主義的な理論にとらわれず、新しい流れを見据えて、労働時間短縮の議論に集中すべきです。大人たちの生き方をもっと人間的なものにし、子どもの中に“生きる喜びと希望”を育てるためには、その実現こそ望まれるのです」
労働の現状に合わせる保育制度ではなく、子どもたちの願いと希望に合わせる労働でなくてはいけないとのワークライフバランス論である。誰もがわかっていることであるが、親も企業も行政も政治家も、自分の立場を考慮して言い出せないままズルズルと動いてきてしまった問題である。それはある意味、幼稚園関係者を含め、子どもを守るべき立場の人々の行動が弱かったためとも言える。
「子どもたちに代わって体を張って主張できるのは幼稚園の先生、あなたたちしかいないでしょう」と加藤教授は改めて檄を飛ばしたのである。その視点はまた、全日私幼連が進める「こどもがまんなかプロジェクト」にも言えることで、この一点にしぼった運動展開を期待したいものである。
幼稚園情報センター・片岡 進