年間1600カ所で巡回公演

劇団すぎのこ「民話劇場」を幼稚園で

最新の舞台演出で日本人の伝統と心情を表現

2010年10月13日

★子どもの視点で自由にイメージできる良さ

「本物を体験する、本物を見る」。幼稚園教育の大事な柱である。その中にはプロが演ずる生のお芝居、人形劇もある。子ども達の表現力、劇あそびを充実していくうえで大きな影響力を持つからだ。TVやビデオとは違う空間の一体感もさることながら、子ども達が自分の興味・関心にしたがって自由にシーンを切り取り、独自のストーリーをイメージできることが何よりの良さだ。
家族で劇場に出かけるのは素晴らしいことだが、幼稚園のホールで、友達と一緒に見るのもまた、共通の話題が生まれ、協同の活動に発展する面白い効果を生むものである。
最近はあまり見かけなくなったが、1970年代には、夕方、ワゴン車で幼稚園に到着した劇団員がホールで舞台づくりを始める光景によく出会った。途中、幼稚園の炊事場を借りて夕食をつくり、夜遅くまで作業を続けてそのままホールの床で寝袋にくるまって眠っていた。真剣な作業の合間にも笑い声の絶えない人達だった。翌日、愉快なキャラバン隊が演ずる人形劇を、子ども達はまばたきも忘れて見つめていたものだ。
そんな幼稚園巡回公演を続ける劇団はまだまだいくつも頑張っている。「劇団すぎのこ」もそのひとつで、5〜6の班編制で年間に1600カ所も回っている。
NHKの「チロリン村とくるみの木」(1956〜1964)を原点とする劇団すぎのこは、今は(財)すぎのこ文化振興財団(小澤幸雄理事長)として研修施設の運営、舞台芸術の普及など幅広い事業を行っているが、その中心はもちろん劇団活動で、人形劇を通じて子ども達の心の啓発に努めている。
中でも1964年の劇団創設当初から力を入れているのが、「泣いた赤鬼」「かもとりごんべえ」「ねずみの嫁入り」などの民話劇場だ。自然を敬い、動物や隣人と仲良く生きる、という人間社会の原点が民話の底流であり、それを子ども達に大切に伝えたいとの思いがあるからだ。
一方で演ずる舞台はどんどん進化している。人間の動きとシンクロする人形、同じ人物を人形と人間が手分けして演ずる不思議なダブルキャスト、そして踊りあり、演奏あり、と現代の子ども達の感性をリードする工夫に満ちている。先生たちにとっても目からウロコのアイディアが一杯つまっている。民族の伝統をしっかり表現する最新の人形劇を、幼稚園のホールでぜひ子ども達に見せてもらいたいものである。
※(財)すぎのこ文化振興財団 http://www.suginoko.org/