★福岡県警の巡査部長は泥酔で衝突
総選挙の陰に隠れてしまったが2009年8月25日、福岡県飯塚市でひどい事件があった。
福岡県警の巡査部長(49)が泥酔状態で運転して衝突事故を起こし、相手の女性に怪我を負わせたうえ、自分の自動車をおいて逃げた。しかし千鳥足では逃走もままならず、現場から500㍍離れた場所で座り込んでいたところを駆けつけた警察官に取り押さえられた。
往生際の悪いことに、巡査部長は飲酒検査を頑固に拒み、「自動車は暴力団に盗まれた。自分は関係ない」と白を切った。裁判所から身体検査令状をとって10時間後に血液検査をしてみると、その時点でも基準値の四倍のアルコールが残っていた。缶ビールを10本以上飲んだ量で、車内にはまだ開ける前の缶ビールが6本あったという。
奇しくもこの日は、泥酔した福岡市職員が追突事故を起こし、三人の子どもの命を奪った、あの忌まわしい事件から3年目の命日であり、それに合わせて福岡県警が「飲酒運転撲滅運動」を行っているさなかのことだった。警察官自身がその運動の意味も存在も知らなかったということだろう。
福岡県だけではない。2008年11月には警視庁で「飲酒運転撲滅運動」の陣頭指揮をとっていた警視(50)が、茨城県内で、やはり泥酔状態であて逃げ事故を起こしたのはまだ記憶に新しい。こともあろうに幹部警察官が飲酒運転をするなど言語道断の極みだ。窃盗、恐喝、詐欺、痴漢などに手を染める警察官は後を絶たない。人間だから魔が差したのかも知れない。しかし、せめて飲酒運転をする警察官だけはゼロになってほしいと願う。
5年前に他界した私の父親は北海道警の刑事だった。北海道の刑事は皆大酒飲みで、父親も例外ではなかった。風雪の中、何日も張り込みを続ける様子を聞くと、酔いつぶれたくなる気持ちもわかるが、父親は決して飲酒運転をしなかった(と信じている)。そして家で酒を飲むたび、幼い私に「いいか息子よ、酒を飲んだら運転するな。絶対にするな」と何度も繰り返した。父親の遺言だと思って固く守っている。それだけ飲酒運転事故のむごさを知っており、また同僚の飲酒運転実態も知っていたのだろう。
★堺屋氏、取り締まり緩和を主張
ビックリすることはまだあった。福岡での泥酔巡査部長事件があったその日に発売された週刊朝日(9月4日号)に、作家・堺屋太一氏(元経済企画庁長官=74)が「飲酒運転の厳罰化が日本を滅ぼす」との一文を寄せていたのである。我が目を疑う新聞広告に飛び上がり、コンビニに走った。
「(略)……その結果、地方の飲食店は軒並みつぶれています。いまや人口20万以下の都市に行くと、夜7時を過ぎたらまったく人が歩いていない。この悲惨な状況をつくった大きな原因のひとつが飲酒運転の取り締まり強化、厳罰化なのです」と述べ、ビールをコップ2杯くらいまでは認めてもいいじゃないかと、経済専門家の立場から主張していた。
とても正気の沙汰とは思えない。たぶん堺屋氏は酒を飲まない人なのだろう。だから酒飲みの習性と心情を知らない。ふつうの酒飲みは、「じゃ、一杯だけ」と口をつけたら止まらなくなってしまうのが常である。
それに、たしかに地方都市では夜8時にもなると人通りが絶えるが、居酒屋の中はにぎわっている。堺屋氏が接待されるような、女性がはべる高級スナックは閑古鳥だろうが、一品400円以下の「さくら水産」や「つぼ八」は席を確保するのも大変だ。
出張のたび、地方都市の格安居酒屋を訪ねている私が言うのだから間違いはない。そしてその酒飲み達は、タクシー、バス、代行運転で家に帰るか、値崩れのおかげで1泊4000円で泊まれるようになった駅前シティホテルか2500円のサウナでゆっくり眠って、翌日はそこから仕事に出る。酒飲みとは酒のためには賢くなる人達なのである。
元通産官僚の堺屋太一氏は小渕内閣、森内閣で経済企画庁長官を務めた。私の本棚にも著作が三冊飾ってあり、未来がよく見える切れ者だとずっと一目置いていたが、「飲酒運転緩和論」が持論のひとつだと知り、呆れ果てた。こんな知識人、言論人が日本を滅ぼすのだと思う。
★成人男性の32%が飲酒運転あり
厚生労働省が2008年7月に実施した全国調査(無作為に選んだ7500人に質問し4123人から有効回答)によると、男性の32%、女性の8%が「飲酒運転の経験あり」と答えたそうだ。飲酒運転経験者の平均年齢は男性が53歳、女性が43歳。しかし全員が正直に答えたとも思えないので、実態は少なくともその二割増しだろうと想像できる。
幼稚園関係者とて例外ではない。2009年7月以降の事例だけでも、飲酒運転で母親と一緒に歩いていた2歳女児を死亡させて逃げた横浜市の私立幼稚園理事長(77)から、酩酊運転でバス停に激突した熊本市の女性私立幼稚園教師(24)まで枚挙にいとまがない。
どうか幼稚園情報センターHPにアクセスしてくれる私立幼稚園の先生方は、絶対に飲酒運転をしないでほしい。警察官を見る以上に、園児の目、保護者の目、地域の目が光っていることも忘れてはならない。そして自らを戒めると同時に、園児の親御さんに「子ども達は『お父さん、お母さんが飲酒運転しないように』と祈っています。だから飲酒運転は絶対にしないでください」と繰り返し訴えてくれることをお願いしたい。
幼稚園情報センター代表 片岡 進