世界一レベルの高い日本の給食産業

笑顔いっぱい、最近の幼稚園ランチ事情

広がる自家製給食、根強い弁当給食

2015年2月15日
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給食会社の工場と連動することで、園児数の多い園でも必要最小限の厨房スペースで対応できるようになった。

給食会社の工場と連動することで、園児数の多い園でも必要最小限の厨房スペースで対応できるようになった。

ランチルームでおしゃべりも弾む。最近はランチルームを備える幼稚園が多くなった。

ランチルームでおしゃべりも弾む。最近はランチルームを備える幼稚園が多くなった。

お母さんの気合いがこもるキャラ弁。フタを開けた子どもが思わずピースサイン。

お母さんの気合いがこもるキャラ弁。フタを開けた子どもが思わずピースサイン。

★小さな厨房スペースでも対応できる
 幼稚園に取材(あそび)に行くと、園児のランチ風景に出会うことが多い。「お弁当(給食)、お弁当(給食)うれしいな」の歌を歌い、お祈りをし、お当番さんのリードで「いただきます」のご挨拶。お友達といっしょに食べる喜びが部屋中にあふれてくる。「良かったら、給食を一緒にいかがですか?」と私にも主任教師から声がかかる。これが何より嬉しい。いそいろと子ども達のテーブルに入れてもらうとすぐに会話が始まる。
「おじさん、誰?」「園長先生のお友達さ」
「どこから来たの?」「千葉県からだよ」
「あ、私、千葉知ってる。おばあちゃんが住んでいる」
「何しに来たの?」「雑誌の取材なんだ」
「取材って何?」「それはね……」と子ども達の好奇心が次々に飛んでくる。食べ終わるときにはたくさんの友達ができる。
 私が幼稚園放浪を始めた40数年前は、自家製給食を行うところは珍しく、ほとんどがパンダやゾウの容器に入った弁当給食だった。必ず何個かの予備があって、そのひとつを頂戴した。それが今は、お皿やお椀に盛りつける自家製給食が多くなった。「作る人の気持ちがこもった料理を食べてもらいたい」という経営者の願いからだが、そこには保育園への対抗心や認定こども園移行への備えなど、経営マインドも織り込まれている。
 自家製給食が増えたのは、必要最小限の厨房スペースと設備で対処できるようになったこと、また外部の専門会社に必要日数だけ委託できるなど、給食の提供システムが進化したことも拍車をかけた。そして昔に比べて味が格段に良くなった。「残飯が10分の1くらいに減りました」と、あちこちの幼稚園で聞く。味に敏感な子どもは無理して食べることはないので、これはすごいことである。調理スタッフの工夫と努力、まさに作り手の気持ちが見える給食になった。

★教員の負担少ない給食弁当
 ランチルームの屋根にLEDサインを付け、翌日のメニューを知らせる幼稚園もある。白は和食、青は洋食、黄色は中華、赤はカレーといった具合だ。もちろん月間メニューは各家庭に届いているが、子ども達の給食への楽しみを前日から盛り上げているわけである。
 メニューが豊富になったが一番人気はやっぱりカレー。「カレーの日はご飯を倍くらい炊きます」と調理スタッフは笑う。その味も、かつての超甘口から様変わりし、カレー党の私もついお代わりしたくなる。子ども達の味覚もまた大きく進化したようである。
 自家製給食が広がる一方で、昔ながらの弁当給食を支持する幼稚園も根強くある。その理由は、㈰教員に配膳や盛りつけなど負担をかけることがない、㈪準備に時間がかからず手早く「いただきます」のご挨拶ができる、㈫天気の良い日は園庭やテラスで食べて雰囲気を変えることができる、などである。たしかにどれも自家製給食の弱点を補っている。
 弁当給食はかつて「ご飯は冷たいし、揚げ物が多くて……」と言われたものだが、これも大幅に改善された。焼き魚や煮物も多くなり、やはり食べ残しがめっきり減った。また大きな保温容器に入って届くので、冬でもほんのり温かい弁当が食べられるようになった。
 週4日の弁当給食を、2日ずつ別の会社に委託する厳しい幼稚園もある。黙っていても両社の頑張りに拍車がかかる仕組みだ。体育指導の講師派遣を正課はA社、課外はB社としている園は多いが、同じ発想と言える。
 お母さん方による食べ比べ試食会を定期的に開いて、弁当の中身について評価と要望を聞いているところもある。とにかく自家製でも弁当でも、日々内容の改善を重ねていかないと給食会社は生き残れないのが実情だ。こうした給食産業のきめ細かさとレベルの高さは、ほかの先進諸外国には決して見られない。日本の幼稚園界が育てた誇りだと言える。

★やっぱり一番人気はお母さん弁当
 という具合に幼稚園の給食が大きく進化したおかげで、かつて主流だった「毎日がお母さん弁当」という園は、もはやめったに見られない。しかし子ども達は「給食は大好き、でもお母さんのお弁当はもっと大好き」と口を揃える。料理などまったくしたことのなかった我が娘の子ども達(=孫)までそう言うのだから驚くしかない。
 動物や乗り物、アニメのキャラクターなどがお弁当に描かれるのを「キャラ弁」と呼ぶ。子どもですら食べるのを躊躇する芸術品だ。その母親の気合いを少し抜いてもらおうと、月に一度「粗食の日」と称してオムスビだけを持ってくる幼稚園も多い。それでも子ども達は「お母さんのオムスビは世界一おいしいんだ」とニコニコ顔だ。母親の作るお弁当には愛と絆の魔法があると言わざるを得ない。
 そしてお母さん弁当なら、そのままバッグに入れて、ちょっと離れた公園や農園まで園外保育に出かけることもできる。そこで、週に4日か3日は給食にして、残りの1日か2日はお母さん弁当、というスタイルが一番多くなった。キャラ弁に命をかけるお母さんも、それなら負担が少ない。
 市内に二つの幼稚園を設置する福島県郡山市の学校法人は、給食の割合について時々お母さん方にアンケートをとっている。「お母さん弁当は週に何回がいいですか?/0回、1回、2回」と。結果はA園は2回、B園は1回と決まり、何度やってもこの傾向は変わらないという。同じ学園の幼稚園を、1回派と2回派が選び分けているのかも知れないが、どちらの園も0回の希望がほとんどないというのが嬉しいところだ。家庭との連携を大事にする幼稚園教育にあって、お母さん弁当の存在意味は大きい。給食がどんなに進化しようと、いつまでもお母さん弁当が消えないことを祈りたい。
幼稚園情報センター・片岡進