★中野私幼は日本の私幼振興の原点
東京都の中野区私立幼稚園連合会(上村映雄会長=ほぜんじ幼稚園)は2011年11月18日(金)、中野サンプラザで連合会結成65周年および父母の会連合会結成55周年の記念式典と記念講演会を開催した。
同連合会の結成は戦後間もない1946年。これが全国各地に私幼団体を生み出す刺激剤となり、また中野区の組織と人脈が全日本私立幼稚園連合会の前身団体である日本私立幼稚園連合会、全国学校法人幼稚園連合会を結成する原動力となった。1957年には全国に先駆けて保護者負担軽減補助金(1人当たり月500円)を区独自で予算化し、これがまた国の経常費補助、就園奨励費補助、そして各自治体の独自補助を実現させる先行事例となった。まさに中野区私立幼稚園連合会は日本の私立幼稚園振興の原点だと言える。
人口約31万人の中野区には今、私立幼稚園が23園。結成当初の42園からは随分減ってしまったが、5年ごとに記念大会を開いて歴史を振り返り、未来への展望を確認していくことは、私幼組織原点としての自負があればこそである。
しかし時代は変わり、新しい波が胸元まで押し寄せてきた。そのことを踏まえて上村会長は「子どもにとって学校教育の始まりが幼稚園教育であることは今後も変わらないでしょう。しかし、これまで培ってきた幼稚園の歴史、実績がどこかに埋没し消滅するようなことがあってはなりません。全体の制度・形はどうなろうと私立幼稚園が目指す理想の道筋をしっかり守っていくことが大事です」と挨拶した。
★中野区長、保育機能の充実に期待感
一方、来賓で挨拶した中野区長・田中大輔氏は「中野区はこれまで幼稚園教育は私立幼稚園に責任を持ってもらい、保育所の整備・運営は区が責任を持ってきました。しかしここ数年、保育所を希望する親が急増し、その比率は36%になりました。待機児が増え、区はその対処に追われています。このまま保育需要が増えていくと、幼稚園教育を希望する親の選択肢が少なくなっていくことが心配されます。そうならないよう社会全体で折り合いをつけなくてはなりません。それが国が検討している新システムだと思います。私立幼稚園もこれからは積極的に保育所の役割を引き受けて、幼稚園教育の場の存続をはかっていただきたい」と挨拶した。
はからずも今後の幼稚園教育について、現場と行政の微妙な姿勢の違いを多くの幼稚園保護者に感じさせる形にもなった。
式典には都議、区議ら約50人が来賓で参加し、区長のほか区議会議長の大内慎吾氏、自民党参議院議員の中川雅治氏、自民党都議会議員の川井重勇氏(私立幼稚園振興議員連盟会長)が挨拶した。またこの5年間に父母の会連合会の会長を務められた方々に感謝状が贈呈された。
5年後の11月は日本の幼稚園教育が誕生140年、中野区私立幼稚園連合会が結成70年という大きな節目を迎えるが、そのときにどんなメッセージが発信されるか注目したい。
★子育て経験が心にゆとりをつくる
式典に続いて、区内の私立幼稚園に年長児を通わせている元宝塚トップスターで女優の一路真輝さんが記念講演を行った。テーマは「女優から母親に……そして今!」。
小学生のときに宝塚スターになることを決意した一路さんは、夢かなって中学卒業と同時に15歳で宝塚音楽学校に入り、礼儀、掃除などを厳しくしつけられた。男役でデビューして人気を高め、「風とともに去りぬ」などでは女役も務める芸域の広いトップスターになった。40歳のときに俳優・内野聖陽さんとの間に女児が生まれ、四年間の子育て専念のあと女優に復帰した。
講演は幼稚園の保護者が知らない舞台人生を語ることから始まったが、今の生活は子育て中心になっているため、すぐに聴衆との間で母親業の楽しさを共有する内容になった。その一部を紹介しよう。
「宝塚歌劇団では男役も女役もやりました。おかげで我が子に絵本を読むときは七色の声を使い分けられます。でも眠くなって演出に手抜きがあったりすると、『ママ、その言い方おかしい!』と娘からダメ出しが入ります。子どもとはいつも真剣勝負です」
「幼稚園での説明会などで、小さな子が泣いても園長先生はまったく動ぜずお話を続ける姿に感銘しました。今では周りがどんなにざわついていても自分の仕事に集中できるようになりました」
「子どもが生まれる前はすべて仕事優先で、時間通りにスケジュールを進めていましたが、自分の思うとおりに時間が進まないのが育児です。そのおかげで随分忍耐強くなりました。人のミスを大らかに許せる人間にもなりました」
「毎日、子どもの歌を聞いて歌っているうちに、苦手だった中音域の声が楽に出るようになりました。そんな風に振り返ってみると、4年間は決してブランクじゃなかった。一番大事な子育てという仕事をしたことで俳優の幅が広がりました。人間には無駄な時間はないことを実感しました」
※一路真輝さんの講演の一部を動画で
YouTubeにアップしてあります。
幼稚園情報センター・片岡 進