笑顔と希望で世界をつなごう

愛知県で「第九」を歌う7園合同の幼児文化芸術祭

“品格ある国際人を育てる”が幼稚園の原点

2013年4月15日
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7園合計400人の年長園児にプロ歌手、市民合唱団、母親コーラス隊が加わり、500人を超える合唱団がステージに並ぶ。そして客席の家族も一緒に「希望の歌」を歌った。

7園合計400人の年長園児にプロ歌手、市民合唱団、母親コーラス隊が加わり、500人を超える合唱団がステージに並ぶ。そして客席の家族も一緒に「希望の歌」を歌った。

オープニングは母と子のワルツダンス。舞踏会デビューの趣である。

オープニングは母と子のワルツダンス。舞踏会デビューの趣である。

子ども達は出演しながら、目の前の芸術をしっかり鑑賞した。

子ども達は出演しながら、目の前の芸術をしっかり鑑賞した。

★愛知万博の「愛・地球博記念公園」で
 2013年3月24日(日)、愛知県内の7つの私立幼稚園が協同した新しいイベントが行われた。場所は2005年愛知万博が行われた長久手市「愛・地球博記念公園」(通称=モリコロパーク)。この中の地球市民交流センター・多目的体育館に7園の園児家族が集まり、ベートベンの第九交響曲「歓びの歌」を合唱したのである。
 主催したのは一般財団法人幼児文化芸術協会(岡田勝彦理事長=鳴海ヶ丘幼稚園園長)。「世の中はいま、待機児対策だ、子育て支援だ、幼保一体化だと制度や政策の議論が多い。幼稚園も振り回されている観があるがそれではいけない。子ども達を文化芸術を備えた品格ある国際人に育てていくのが幼稚園教育の原点。この原点にもっと磨きをかけることこそ大事」との趣旨に、まずは7つの幼稚園が賛同して設立された財団法人である。
 7つの幼稚園は50音順に栄光八事幼稚園(名古屋市天白区)、志だみ幼稚園(同守山区)、中央台幼稚園(春日井市)、とみよし幼稚園(愛西市)、名古屋西幼稚園(名古屋市西区)、鳴海ヶ丘幼稚園(同緑区)、美里幼稚園(豊田市)。卒園式を済ませた年長児計400人がステージに立った。
 「第1回幼児文化芸術祭」は、第6回モリコロパーク春まつりの目玉イベントとして開催された。この試みには市民合唱団、中学生ジャズオーケストラ、市民バレエ団、それにクラシックのプロ歌手(ソリスト)4人が友情出演。各幼稚園の母親コーラス隊も加わり、総勢500人を超える合唱団となった。さらに会場に詰めかけた父母、兄弟、祖父母も一緒に歌い、幼稚園卒園と小学校入学を祝う「歓びの歌」が大きな円形ドームを震わせた。

★仲間の苦労をみんなで発展させ
 春休みの子ども達にさまざまな体験を提供する愛知県主催の「モリコロパーク春まつり」。ここに最初から参加していたのは志だみ幼稚園(佐藤彰芳園長)だけだった。幼稚園として名を連ね、私立幼稚園の遊びと学びを多くの人に知ってもらうことに意義があると考えたからだ。しかし1園だけで続けるのは大変でもあった。その苦労を聞いて、日頃交流のある6園が「自分たちも参加してスケールの大きいことに発展させよう」と話が運んだ。
 中身を何にしようかと相談していた折、たまたま栄光八事幼稚園と鳴海ヶ丘幼稚園が、年末の音楽リズム発表会に「歓びの歌」を取り入れたのを見て、「これがいい」と皆の意見が一致した。
 ㈰親子で一緒に歌うことができる、㈪いつまでも心に残り歌い続けることができる、㈫世界中の人と歌うことができる、㈬幼稚園卒園、小学校入学と、子どもの健やかな成長を喜ぶ気持ちを表現できる、㈭芸術性に優れている、という条件に合致したのである。
 当日歌われたのは「希望の歌〜交響曲第九番〜」(六ツ見純代作詞・藤澤ノリマサ作曲)。「歓びの歌」原曲を子ども達にもわかりやすい言葉、歌いやすい曲調にアレンジしたもので、♪あなたが笑顔でいられるように、みんなが笑顔でいられるように、明日につながる希望をのせて、笑顔のチカラで世界照らそう♪というサビ(音楽でもっとも盛り上がる部分)の歌詞が心に残った。各園で練習してきたとはいえ、7園合同で歌うのはこの日が初めて。しかし子ども達は度胸満点、ドイツ語歌詞の3番もみごとに歌った。
 そして7園寄れば文殊の知恵。合唱前後の演出にも次々とアイディアが生まれた。オープニングは名古屋ナンバーワンの腕前を誇る中学生のジャズオーケストラ。満員の聴衆が耳をすませ手拍子を打った。幼児から中学生までのバレリーナ群舞に続いて、中央のレッドカーペットでは園児親子が華麗なるワルツダンスを披露した。芸術の郷オーストリアでは、高校を卒業した子どもが舞踏会デビューを行う。これが実質的な成人式となるが、その文化を先取りした形である。
 出番を待つ合唱団の園児は、客席の家族に手を振ると同時に、目の前で繰り広げられる芸術の数々を目を丸くして見つめていた。みずから披露し、しっかり鑑賞するという「幼児文化芸術祭」にふさわしい光景でもあった。

★親が感ずるネットワークの心強さ
 サッカー大会や音楽コンクールなど、地域を超えていくつもの幼稚園が参加するイベントは古くからあるが、同じ曲を全員で歌ったり演奏するスタイルは少ない。勝ち負けや技量の違いに関係なく、全員で同じことを行うのは、いいものである。親も子も心が開かれていくのを感ずる。そして親はまた、こうした合同イベントを頼もしく思っている。我が子に多くの友達がいるのを嬉しく思うように、自分の幼稚園に多くの仲間がいることに心強さを感ずるからだろう。
 1社で100園以上の保育所を経営する株式会社が台頭する中、これからの私立幼稚園経営はひとつの学園だけでやっていくのが難しい時代になったと言える。TTPの行方はわからないが、米国、豪州の巨大な保育事業グループが乗り込んでくる可能性もある。対抗するには共通認識を持つ幼稚園が集まり、知恵と力を出し合っていくことが望まれる。その幕開けを感じたイベントでもあった。
 約1時間のコンサートが終わり、体育館を出た親子は広い公園に散ってお昼を食べた。制服の違う園児家族が笑い合っている姿もあちこちにあった。一緒に歌ったことで生まれたつながりの輪だ。岡田理事長は最後の挨拶で「子どもを真ん中にして、家族が、地域の人々が一緒に歌う。これが大事なんです」と述べた。この意識、文化が根付いたときに日本の少子化問題が解決するのだと思う。

※「第1回幼児文化芸術祭」の一部(ワルツ舞踏会、合唱、理事長挨拶)を動画にまとめました。(YouTube)

※参考:藤澤ノリマサ氏が歌う「希望の歌〜交響曲第九番〜」の全曲。(YouTube)
幼稚園情報センター・片岡進