服部幸應氏が埼玉県の教職員大会で講演

「食育」とは「食卓で行う家庭教育」

テレビを消して会話と観察を楽しもう

2011年3月21日
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服部幸應(はっとり・ゆきお)

服部幸應(はっとり・ゆきお)
料理研究家、医学博士、服部栄養専門学校理事長・校長、立教大学講師。
1945年12月生、東京都出身。立教大学社会学部卒、昭和大学大学院医学研究科博士課程修了。
(社)全国調理師養成施設協会会長、(社)全国栄養士養成施設協会副会長、東日本料理学校協会会長、NPO日本食育インストラクター協会理事長。
内閣府「食育推進会議」委員ほか政府関係機関の委員を多数務めている。

★数字の強さで多数の役職を担う
 毎年、夏休み最後の金曜日に行われる(社)全埼玉私立幼稚園連合会(平原隆秀会長=春日部成就院幼稚園)の教職員大会。2010年の大会で料理研究家・服部幸應氏の講演を聞いた。“グルメなおじさん”としてTVへの登場も多く、若い人達にもよく知られている人だ。独特の詰め襟衣装は黒ずくめことが多いが、この日は暑さへの配慮か、それとも幼稚園教師や若い母親への講演こそが一番大事と考えている気合いのせいか純白のいでたちがステージに映えた。
 組織のトップとして活躍する人は概して数字に強く記憶力が良いものだが、服部氏はその典型だった。「埼玉県の食糧自給率はどのくらい?」「食事時間中にテレビを見ている家庭は日本は何%だと思う。じゃアメリカは?」という話題が次々に出てくるが、数字は小数点1位まで、日付は何月何日まで正確に話す。
 頼まれたら断れない人の好さと、どこにでも出かけて持論を語りたいという執念からなのだろう、服部氏は内閣府の食育推進会議委員、文科省の中教審委員を始めとしてミスユニバース審査員まで政府機関、民間団体の役職を、それこそ山ほど引き受けてきている。「一体、服部さんは何人いるのだろう?」と思わせるほどだが、それを支えているのが数字の強さだと感じた。

★食育の三本柱は「選食」「伝承」「食糧事情」
 服部氏が提唱し、すっかり定着した「食育」という言葉。そこには①安全な食べ物を選ぶ能力(選食能力)、②衣食住に関する伝承と生活習慣、③食糧事情と環境問題、この三つの柱があると言い、とりわけ伝承と生活習慣が大事だと訴えた。
 それにはどうするか。服部氏の主張は単純明快だ。「家族全員が一緒に食卓を囲んでご飯を食べることです。すべてはここから始まる。物事のよくわからない1歳の赤ちゃんも、家族と一緒に食事時間を過ごすことに大きな意味がある。保育所に19時、20時まで預けていてはダメだ。食卓は一緒に話し合ったり、相手を観察したりして一般常識の80%が身に付く場です。そう、食育とは食卓で行う家庭教育のことなんです」ということだ。
 意識しているのかどうか、服部氏の講演には聞き慣れない横文字が一切出てこない。したがってワークライフ・バランスという言葉も出てこないが、「夕方18時には家族全員で晩ご飯を食べ、21時には子ども達は眠っている。そういう生活を国民すべてが取り戻さなくては健全な子どもの成長、幸福な人間社会はあり得ない」と、その論理はまさに真のワークライフ・バランスを説くものである。

★子ども心をいつまでも持ち続ける

 さらに服部氏は「日本人はテレビを見ながら食事をするという文化をつくってしまった。家族の話を聞くよりテレビを見ている。だらしない民族になってしまった」と嘆く。
元祖食育論者が説く食育の原点は、栄養バランスとか食品添加物という話ではなく、①朝と晩、年間730回は家族みんなで食事をする、②食卓からテレビを排除する、この二点に集約されることがわかった。これなら幼稚園の先生にもわかりやすく、お母さん方にも伝えやすい。
 服部氏の話は食育だけにとどまらなかった。わらべ歌、昔話、ガキ大将を中心にした群れ遊び、嘘をつくと舌を抜いてくれる閻魔さま……とどんどん広がっていく。幼稚園教師に伝えたいことが山ほどあるようだ。そして自分の子ども時代をまるで昨日のことのように語る。多くの園長先生たちと同じように、いつまでも子ども心を色濃く持ち続けている人である。幼稚園関係者や園児保護者への講演をもっと行ってほしいと思った。
 しかし時間管理には手慣れた人でもあり、話はいよいよ佳境と思った瞬間、「ここで時間となりました」とみずからスパッと断ち切った。「毎晩、おばあちゃんの昔話を聞いているうちに眠ってしまった。だから今も桃太郎や金太郎の話の結末を知らない」という人だけに、その潔さにも恐れ入ったものである。

※服部氏の講演全文(A4判4枚に要約)は『月刊・私立幼稚園』の研修会レポートに掲載しました。プリントして貴園の教職員、保護者に配布するなど是非ご活用ください。

『月刊・私立幼稚園』編集長・片岡 進