福島原発事故と私立幼稚園

放射線問題に幼稚園はどう対処したらいいか

測定器を導入して自園の状況を確認しよう

2011年9月25日
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鉢呂吉雄(はちろ・よしお)

鉢呂吉雄(はちろ・よしお)
北海道4区(小樽市・札幌市手稲区ほか)選出民主党衆議院議員(当選7回)。注:2000年までは8区(函館市ほか)選出。
1948年1月生・北海道新十津川町出身。北海道大学農学部卒。農協職員、日本社会党代議士、国会対策委員長、民主党副代表などを歴任し野田内閣で経産相に就任したが失言で9日目に辞任した。

放射線測定器を導入した幼稚園の事例を紹介する北海道新聞の記事。

放射線測定器を導入した幼稚園の事例を紹介する北海道新聞の記事。

★鉢呂大臣の失言が残した教訓
 「死の街だった」「放射能をうつしてやる」……野田佳彦首相と一緒に福島第一原発の視察を行った鉢呂吉雄経産相は、このふた言で大臣の職を失った。親しい報道陣相手のオフレコの場であったとしても、国会議員としての資質、感性が疑われる発言は報ぜられて然りだ。日本を混迷国家におとしめた鳩山内閣、菅内閣の後を受け、「三度目の正直になるか」という国民のかすかな期待を受けて船出した野田新内閣は船出から1週間で傾いた。
 「そうムキにならなくてもいいんじゃないか。子どもじみた他愛ない発言だ」と一笑に付す向きもあるが、福島県の人々を傷つけただけでなく、長年この種の言葉に苦しんできた広島県、長崎県の人々をも傷つけたのだから、その罪は重い。こうした言葉が出ないよう「思いやりの心」を大切にしてきた幼児教育の努力を蹴飛ばすものでもあり、函館出身の筆者は同郷人として恥入るばかりだ。
 しかし今、果たしてどれだけの日本人が広島、長崎の苦しみに目を向けているかと問われれば首をすくめるしかない。それを思うと、東日本大震災と福島原発事故はこの上なく不幸なことではあるが、忘れかけていた日本人の痛みと苦しみを思い出し、思いやりと礼節で身を引き締める機会であるとも言える。

★専門家のセミナーに手がかり求めて
 そこで私立幼稚園の園長さん達は、「放射線汚染から子どもを守るにはどうしたらいいか」「幼稚園として子どもと親に伝えるべきことは何か」を求め、放射線セミナーを歩き回っている。2011年7月13日、東京市ヶ谷の私学会館ではNPO法人幼児教育従事者研究機構(奥園淳子理事長)が主催する勉強会「放射線汚染の影響と対策」が開かれ、定員80人のところに首都圏の幼稚園経営者約200人が詰めかけた。
 講師は三人。まずは文科省大臣官房企画官の伊藤学司氏が「学校施設の安全確保については文科省から適宜通知している。しかしメディアを通じて情報が洪水のように流され、それが無用な不安を広げている。現場の皆さんは専門家の話をよく聞いて冷静に対処してほしい」と呼びかけた。
 これを受けて、東京工業大学原子炉工学研究所の二ノ方寿教授、日本原子力研究開発機構の柴田徳思研究員(元東京大学原子核研究所教授)の二人が、原発事故の現状と放射線の健康被害について講演した。はからずも「二重、三重の安全装置を動かす電源を喪失した事実を知ったとき目の前が真っ暗になった。同時にメルトダウンは間違いないと思った。でもそれを言い出すことができなかった」という原発専門家の呪縛と苦悩を聞き、また「1000ボルトはもちろん100ボルトでも電気に直接触りたくないが、今の放射線数値は1.5ボルトの乾電池に触っている程度だ」という放射線職人の独特な相場感覚も知ることはできたが、全体の内容はテレビ、新聞等で伝えられている情報の域を出ず、「では幼稚園は何を考え、どう行動すべきか」についての示唆はなかった。

★日本全体に対する海外の不安
 逆に言えば、専門家がそこまで踏み込むことはないのだから、いくら放射線セミナーをハシゴしても答えは得られないかも知れない。そこから先は、やはり経営者自身が考えなくてはいけないということだろう。その第一歩として、放射線測定器を導入して幼稚園と周辺地域の実情を自分の目で確認することは有効な方法だと思う。
 千葉県・M幼稚園では、園長先生が毎日しゃがみこんで測定を繰り返す姿が親の不安をやわらげ、子ども達に放射線問題の重大さを伝えることになったという。機器によって測定値にバラツキがあると聞いた北海道・K幼稚園は、定評のあるロシア製の高性能器を取り寄せた。同園はモンゴル、ベトナム、中国などとの姉妹園交流に力を注いでいるが、それらの幼稚園から放射線の影響を不安視するメールが相次いだ。海外から見れば北海道も福島も同じ日本ということなのである。「それなら国際的に信頼度の高い機器で調べてみよう」となったわけだ。
 独自測定を始めた幼稚園の多くは、「うちの園、地域は安全であってほしい」という願いを裏付ける結果になっているが、それでも雨水が流れ込む場所などでは高い数値を示し、子どもや親に適切な注意喚起を行うことができたという。悩んだり愚痴をこぼしたり、同じ話を何度も聞く時間があったら、まずは行動して自分の身体で確認してみることが大事だ。そこから、親と子どもに対する幼稚園からの真実のメッセージが自然に生まれてくることと思う。
幼稚園情報センター・片岡 進