ミュージックステップ30周年記念

東京文化会館で幼稚園の合唱コンサート

音楽の殿堂に響きわたる澄んだ歌声

2012年3月16日

★51年の歴史で初めてのこと
 クラシック音楽の殿堂あるいはオペラの聖地と言われる東京文化会館は、JR上野駅の公園口を出た真ん前にある。太平洋戦争の空襲で廃墟となった東京は、戦後、人々の懸命な努力でめざましい復興を遂げたが、その仕上げとして1961年に完成、開館したのが東京文化会館である。まさに東京人いや日本人の不屈の魂が込められた建物といえる。その後、各地で最新設備の音楽ホールが次々に誕生したが、抜群の音響効果、ステージ周りの広いスペースなど、まだまだ最高レベルを維持しており、世界中の音楽家がこの舞台に立つことを目標にしている。
 2012年1月16日(月)、その音楽の殿堂で幼稚園児の合唱コンサートが行われた。開催したのは東京都足立区・東京いずみ幼稚園、千葉県我孫子市・布佐台幼稚園、千葉県柏市・手賀の丘幼稚園、それに東京いずみ幼稚園の卒園児(小学生)で編成するいずみMS幼小合唱団による三園合同コンサート。幼稚園児の演奏会は東京文化会館の51年の歴史の中で初めてのことで、画期的な出来事となった。
 この三園は「ミュージックステップ(MS)」という音感教育を取り入れており、そのMS教育法が30周年を迎えたことから、子ども達に最高の舞台を用意することになったもの。もちろん同会館を使うにはいくつものハードルがあり、出演者の音楽レベルや聴衆についての厳しい事前審査をクリアして開催にこぎ着けた。
 それだけに、目をつぶって聴いていると、とても幼稚園児のものとは思えない澄んだ歌声が響きわたり、園児の家族らで5階席まで満員となった聴衆を酔わせた。
 
★ソプラニスタ・岡本知高氏もビックリ
 世界のステージに立ったのは三園合計で年中児が336人、年長児が279人、それにいずみMS幼小合唱団53人の計668人。いずみMS幼小合唱団は、平均年齢で日本最年少の合唱団として知られ、さまざまなコンクールで金賞を射止め、ポーランド、ドイツで海外演奏を行うなど活躍しているが、さすがに東京文化会館での合唱には気持ちがひとつ違ったようで、いつも以上の力を発揮した。
 MS教育法は、いわゆる教え込む技法ではなく、友達といっしょに感じ合い、協調して、歌声や演奏を揃えていく独特のスタイル。この日の演目もお正月をはさんで約2ヶ月で仕上げたという。そうはいっても3園合同で練習する機会はなく、当日午前中のリハーサルで駆け足で合わせたものの、ほとんどぶっつけ本番の状況だった。しかし子ども達は、本番に強い集中力を発揮し、他園の子ども達と感じ合って、みごとな歌声と鍵盤ハーモニカ演奏を披露した。
 第一部(年中児)と第二部(年長児)の間に、特別ゲストとして世界有数のソプラニスタ(女声ソプラノの声域で歌う男性歌手)・岡本知高氏が登場し、「アベマリヤ」「早春賦」「故郷」などを歌ってくれたが、その岡本氏は「世界中あちこちで子ども達の歌を聴いているが、こんな幼稚園児のコンサートは初めてです。これほどきれいに頭声で歌っていることに驚いた。しかも音程がそろっている。これは高校生でも難しいことです。私も負けてはいられないと思いました」と語ったが、この後、もっと歌声の美しい年長児が登場したので、おそらく楽屋で腰を抜かしたことだろう。
 その子ども達の歌声を聴いてもらえるよう、3時間近いコンサートのごく一部だが、動画を添付したのでご覧いただきたい。
 さてこの画期的出来事のあと、東京文化会館にチャレンジする幼稚園がほかに現れるかどうか注目したいところでもある。

※三園合同年長児合唱「歌よありがとう」(YouTube)


※鍵盤ハーモニカの演奏「ディヴェルティメント」(YouTube)


※卒園児合唱団「感謝します」(YouTube)
幼稚園情報センター・片岡 進