『あんふぁん』が保護者、教師から作品募集

2011年ようちえん川柳、大賞は「嵐」

好きな人 パパ「ママ!」僕「ママ!」 ママ「嵐!」

2012年3月18日
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嵐(あらし)

嵐(あらし)
1999年に結成されたジャニーズ事務所のアイドルグループ。東京出身の4人、千葉市出身の1人で構成されている。

柿の実の嵐=KARASHI

川崎市麻生区・柿の実幼稚園のファミリーコンサートに登場した「柿の実の嵐=KARASHI」。元気な男性教師4人が、お母さん方のバックバンド、バックダンサーズの応援を得て、猛烈に歌い踊った。

★幼稚園ライフへの視線のおもしろさ
 「川柳とは、江戸中期に発生し、機知的な表現によって人事、風俗、世相などを鋭くとらえた十七音の短詩形文学」と国語辞典には表記されている。要は、俳句と同じ十七音に庶民の日常風景、生活感覚を凝縮したもので、「風流の俳句」に対して「風刺の川柳」と言うことができる。
 第一生命のサラリーマン川柳、読売新聞のよみうり時事川柳、TBSラジオのカレー川柳などジャンルもいろいろあって、われらが「ようちえん川柳」もある。幼稚園保護者向けのフリーマガジン『月刊あんふぁん』を発行するサンケイリビング新聞社(あんふぁん事業部)が募集するもので、幼稚園児を持つ親、幼稚園教師からの作品を集めている。
 入選作しか見る機会はないが、幼稚園ライフに対する視線の面白さにはいつも脱帽だ。誰もが見かける、どこにでもある光景を素直に表現していて、「あ、そうそう、私もおんなじ」というみんなの共有体験が笑いを誘う。まさに川柳の真髄である。
 その第3回となる「2011年ようちえん川柳大賞」が昨年12月に発表された。応募総数12,397作品の中から選ばれた栄えある大賞は、「好きな人、パパ『ママ!』僕『ママ!』 ママ『嵐!』」(東京都大田区・福武綾子)だった。
 お父さんが子どもに「パパとママ、どっちが好き?」と聞いたり、子どもがママに「僕とパパ、どっちが好き?」と聞く光景はどこの家庭でも見られる。男の独占欲とナルシズムがなせる馬鹿さ加減であるが、ママはそれを利用してパパと息子の気持ちを器用に手玉にとっていく。
 福武さんの家庭では、絶対的存在感のママに配慮して、パパも息子も「ママが好き!」と叫んでいるのに、ママはしらっと「私は嵐が好き」とかわしている。パパも息子もズルッとこけたことだろう。手玉のとり方が一枚上で、昭和の母親から平成のママに進化した姿を見る思いがした。
 ところでこの「嵐」とは何者なのか。テレビは年に1回、箱根駅伝しか見ない(2011年7月からは政府の都合でテレビが映らなくなり、箱根駅伝も見られなくなった)生活を長く続けている小生にはピンとこない。かつて、川崎市・柿の実幼稚園で「柿の実の嵐=KARASHI」という熱血グループを見たことがある。若い男性教師4人が歌って踊る姿だった。そこから、どうも「フォーリーブス」のようなアクションコーラスグループらしいとに察しはついたが、改めて調べてみた。
 女性園長、保護者会役員ら10人に聞いてみたところ、「お母さんたちは本当に嵐が好きです。うちの園では半分くらいの人が嵐ファンのような気がします」と、ほぼ同じ答えが返ってきた。北海道の幼稚園では、当方からの質問に応えて実際にアンケートをしてくれた園長さんもいた。ちなみにその園長さんは「でも私はスマップが好き」と言っていた。

★わが子の未来に、嵐の願いを重ね
 どうしてそんなに、幼稚園のお母さん方は嵐が好きなのか。これについても、アンケートをしてくださった幼稚園を含め、たくさんの意見が寄せられた。それを要約すると、次の三つにまとめられる。
(1)1人ひとりの個性が豊かで、芸能人としての資質、能力が高く、歌も踊りも会話も上手だ。
(2)そんな優秀で個性の強い人の集まりなのに、グループとしてのまとまりが強く、仲が良く、互いに尊重し合い、助け合っている。
(3)芸能人ぽくなく、身近にいそうな好青年たち。下品さや危うさもなく、子どもと一緒に安心してファンになることができる。
 つまりは、10年か20年先、うちの息子もあの5人の誰かのような人になってほしい、という切なる母心のようである。
 余談になるが、わが町(千葉市花見川区幕張本郷)には行列の絶えない中華レストランがある。最初に行列を見たとき、その年齢層と女性ばかりの様子から「どこかの女子校の同窓会があるんだな」と思った。しかし連日なのでおかしいと思って息子に聞いてみると、「ええ!知らなかったの。あそこ、嵐のA君の実家だよ」と呆れられた。
 どうして本人のいない実家のレストランに人が押し寄せるのか、逆に疑問に思うが、母親の姿に接することで我が振りを変えようという意識があるなら、立派なことである。
 それはともあれ、今回の大賞作品には「パパも息子も嵐のレベルにはほど遠い。ママ好き!って叫ぶ前に、もう少し嵐を見習ってよ」という気持ちが込められているのだろう。しかし実際の嵐ファンママは、ミニ台風のようなパパと息子を心から愛し、現実のギャップを笑って乗り越えていく肝っ玉母さんばかりだと思う。それが“幼稚園ママ”の心根だからだ。

※2011年ようちえん川柳・入選受賞作品(PDF)
幼稚園情報センター・片岡 進