幼児教育無償化の専門家会議(第5回)

「振興」と「無償化」の意味を明確にすべし

2008年10月21日

★導入時期ともからむ「評価」実施状況
幼児教育の無償化に向けて、その課題や方向性を検討する文科省の専門家会議「今後の幼児教育の振興方策に関する研究会」(無藤隆座長)の第5回会合が、9月29日(月)に開催された。(委員名簿は末尾に記載)
この日はまず幼稚園と保育所における「評価」の実施状況が報告された。無償化を導入するには教育内容、教育環境を一定レベルに保つための評価が欠かせないとの前提があるからだ。
報告内容は幼稚園の場合、2006年度の「自己評価」実施率は公立幼稚園が85.7%、私立幼稚園が52.9%。そのうちの公表割合は公立15.6%、私立12.0%。保護者・地域住民などによる「学校関係者評価」の実施率は公立が22.1%、私立が11.1%。公表率は公立36.0%、私立29.8%となっている。私立の実施率が低いが、2007年の学校教育法改正で自己評価が義務化、学校関係者評価が努力義務化されたものなので普及はこれからと言える。
一方、評価の導入が先行している保育所では、社会福祉法で努力義務化されている「第三者評価」を実施している所が全国で917カ所(2007年調査)。対象となる認可保育所22,909カ所、東京都認証保育所415カ所の実施率では3.9%にとどまっている。
評価の実施・公表の普及定着が、無償化の導入時期とからんでくると思われるので、その推進が望まれるところである。
続いて2003年に実施された(財)ソニー教育財団の「保育に関する意識調査」(監修協力者=秋田喜代美委員)の内容が報告された。これは保護者が幼稚園(または保育所)を選ぶ基準、保護者の保育に対する「期待」と「満足」などを調べたもの。調査項目、分類が多岐にわたり簡単にまとまることはできないが、そこからは幼稚園でも保育所でも、親は「集団生活の中で子どもが健全に育つこと」を一番に求めており、選択基準では「教職員の人柄」を重視している姿が見えてくる。
同調査の報告書全文(PDF)を見たい方は、ソニー教育財団ホームページの「発表・研究」からダウンロードしてください。

★無償化イコール「無料」になるのか?
そして最後に、これまで4回の会議で交わされた意見内容の整理と確認が行われた。委員の発言内容が詳細に分類列記されたが、それを事務局で整理した案文は別掲(※)のとおり。
ここでは、会議報告書や提言を作成する上での言葉の問題がふたつ提起された。
ひとつは研究会の名称にもある「振興」である。振興には「教育や文化を盛んにすること」の意味があるが、一般には産業や業界の振興というイメージも強いため、無償化が幼稚園、保育所の経営を支援する幼児教育産業振興の意味にもとられかねないとの指摘である。たしかに誤解を生む要素は否定できない。「振興」の言葉を使うのであれば、その意図、内容を明確にしておく必要はあると言える。
もうひとつは「無償化」という言葉である。
「無償化というと普通は無料、つまりタダと考えます。幼稚園に納めるお金は一切不要というイメージを持つと思う。果たして本当にそうなるのでしょうか。実際はそうならないなら、無償化の言葉を変えた方がいいのではないだろうか」との疑問が自治体代表の委員から出された。
これには他の委員から「給食代、バス代などは対象にならないので、たしかに完全に無料になるわけではないが、教育にかかる経費はすべて公費でみるのだから、公立の小中学校と同じく無償化という表現で問題ないのではないだろうか」との応答があり議論はそれで終わった。
しかし「教育にかかる経費にすべて公費が投入される」というのも正しくないと思われる。無償の対象になるのはあくまで標準的な経費であって、それ以外のプラスアルファの教育を行っている場合は、当然その分を保護者に負担してもらうことになるだろう。
したがって公立幼稚園との差別化や特色教育を行っている私立幼稚園では、多くの場合、教育費は無料にならないと想定される。そのへんのイメージ、図式を最初にはっきりさせておかないと、後々保護者や私立幼稚園の間で思わぬ論争が起きることになるだろう。

※事務局(文科省幼児教育課)の意見整理案(PDF)をご覧 になりたい方はここをクリックしてください。

◇委員名簿
・座長 無藤隆(白梅学園大学教授)
・副座長 秋田喜代美(東京大学大学院教授)
・委員 稲毛律夫(江戸川区子ども家庭部長)
岩立京子(東京学芸大学教授)
岩淵勝好(東北福祉大学教授)
大竹文雄(大阪大学教授)
柏女霊峰(淑徳大学教授)
佐藤津矢子(高知県教委幼保支援課長)
森上史朗(子どもと保育総合研究所代表)
幼稚園情報センター 片岡 進