看板の返上が128園あったが

認定こども園は倍増の2,836園に

保育所、公立幼の移行が大幅に増え

2015年7月19日

★移行の雪崩現象は起きるか?
 子ども・子育て支援新制度が始まって、果たして認定こども園の数はどうなったのか。フタを開けると、2014年度の1360園から2,836園へと倍以上に増えた(詳しくは添付資料参照)。「疑問と批判が渦巻く中での見切り発車」と言われた新制度だが、この数字を見るかぎり一定の評価を受けたと言わざるを得ない。
 旧制度による認定こども園が誕生したのは2007年。初年度の認定件数は94件だった。内閣府は2〜3年で2000園にしたいと目標を掲げた。「2000園を超えれば流れが決まる。後は黙っていても増え続ける」との腹だった。しかし8年たってもその思惑は実らなかった。それが新制度になってついに2000園の壁を突破した。内閣府が期待する雪崩現象が起きるかどうかは来年を見ないとわからないが、各地を歩いていると「2016年か2017年には移行したい」と施設の新設・改修を準備している幼稚園が目に付く。またギリギリまで公定価格が決まらず、2015年度の移行を見送らざるを得なかった幼稚園が多かったことを考えると、雪崩現象の可能性は否定できない。
 新制度のスタートに際して、園児数の多い幼保連携型認定こども園では「給付金を試算すると公費収入が数千万円も減る。これでは経営が成り立たない。新制度に移行できない」と認定こども園の看板を返上し、幼稚園と保育所に戻った事例があちこちで起きた。内閣府の報告では「認定こども園から認定こども園以外の施設に移行したものが128ヶ所」とある。これらの園は、あえて第一線に立って「認定こども園で幼児教育の未来を拓こう」と取り組んでいただけに、撤退は残念なことだ。再び認定こども園に戻れるよう、財政制度の見直しと改善を期待したい。
 報告書に数字は表れないが、幼保連携型をいったん返上して、幼稚園型に認定を取り直したという事例も多い。「0〜2歳は保育園」+「3〜5歳は幼稚園&預かり保育」という接続型が、幼保連携型として認められないためのやむを得ない対処だ。幼稚園の預かり保育を受ける子が、どうして2号こどもにならないのか、割り切れない話である。これについても見直しと改善が必要だ。

★公立幼は団体の名称も変更
 倍増した数字の内訳を見ると、保育所、公立幼稚園からの移行が大幅に増えている。保育所の移行は1,047ヶ所で、公立幼稚園の移行は、幼稚園からの移行639園の半数、約300園と推定される。公立幼稚園については、市町村が自ら認定こども園を設置することで、改革の姿勢を内外にアピールするネライと思われる。そのため1950年創設の長い歴史を持つ全国国公立幼稚園園長会は「全国国公立幼稚園・こども園園長会」(岩城眞佐子会長=東京都・月島幼)と名称を変えた。
 保育所については特に施設の改修をしなくても、定員の余裕を1号こども用に振り向ければ幼保連携型になれる。そうすれば施設全体が幼稚園と同じ教育機関と見なされる利点を得るので、今後も地方都市を中心に増加が続くと見込まれる。認定こども園になった保育所からは「計20人を1号こども用の枠にしたが、3歳、4歳で一杯になった。来年は枠を広げなくてはいけない」などの声が聞こえる。幼稚園に来るはずだった専業主婦家庭の子どもが保育所に流れたことを物語っている。これに対抗するには、幼稚園も認定こども園になって、保護者に対する選択条件を揃える必要があるだろう。

★望まれる三つの組織の一本化
 都道府県別に見ると、認定こども園が多いのは大阪287、兵庫230、茨城164、青森158、静岡120、北海道109……など。逆に人口規模から見て少ないのは東京93、神奈川56、千葉49、埼玉40、愛知58、京都13……など。
 過去、預かり保育、満三歳入園、未就園児教室などが導入された時も、大阪、兵庫の幼稚園が先行した。それと同じ傾向が見える。首都圏が少ないのは移行に慎重というより、移行の必要性を感じないということだろう。一方で地方都市では、もはや認定こども園にならなければ生き残れないという実情も見えてくる。
 もうひとつ認定こども園については、その組織をどうするかという課題がある。全日本私立幼稚園連合会(香川敬会長=山口県・鞠生幼)は、私立幼稚園から移行した認定こども園の問題に対処するため、認定こども園委員会(森迫建博委員長=宮崎県・富高幼)を常設し、2015年6月29日、東京市ヶ谷のグランドヒル市ヶ谷で初めての全国研修会を開催した。「同じ私立幼稚園の仲間として一緒にやっていこう」という姿勢を公式に示したわけである。
 しかし私立幼稚園系の団体としては、すでに2007年の段階で全国認定こども園連絡協議会(木村義恭会長=北海道・コロポックルの森)と全国認定こども園協会(若盛正城代表理事=埼玉県・まつぶし幼)が存在し、各種事業を繰り広げている。この三つの組織を一本化することができるだろうか。あるいは足並みを揃えることができるだろうか。それができないと認定こども園制度に対する私立幼稚園の働きかけが曖昧になり、改善の成果を出せないことにもなりかねない。また三つの組織に重複加入するようなことも避けなければならない。
 かつて私立幼稚園は、保育所と同じように三つの団体に分かれていた。それを血の滲むような努力で一本化したのが全日本私立幼稚園連合会である。奇しくも今年は統合から30年の節目になる。その経験を生かして、認定こども園の組織統合に取り組んでもらいたいものである。

(添付資料)
・内閣府発表・2015年度認定こども園の数(PDF)


幼稚園情報センター・片岡 進