政権基盤強化から生まれる新しい流れ

2014年総選挙の結果と子育て新制度の行方

家庭重視の復活へ、さらなる方向修正の期待

2015年2月1日

★討ち果たされた民主党の悪夢
 2014年12月14日、第47回衆議院議員総選挙が行われた。結果は自公連立与党が計326議席を得て前回2012年総選挙を上回り、より確かな政権基盤ができた。与党の連続大勝は“振り子現象”が続いた最近の選挙情勢では珍しいことだが、これもひとえに3年半に及んだ民主党の政権運営が余りにもお粗末だったことに尽きる。奇しくも元禄15(1703)年の赤穂浪士討ち入りから312年目のこの日、民主党の悪夢を討ち果たしたと言える。
 民主党政権の失敗は、政権交代をタテに従来の制度、計画を次々にひっくり返したことにある。沖縄基地、八ッ場ダム、事業仕分け……そして幼保一体化しかり。机上の理想論では理のあることかも知れないが、どんな事業にも長い歴史があり、良かれと信じて汗を流してきた人々がいる。物ごとを円滑に改善するには、関わってきた人たちの顔を立てながら穏やかに舵を切る。これが日本の文化だ。民主党政権はその点の配慮が足りなかった。そのため「また民主党が息を吹き返すようなことになったら大変だ」という痛恨な経験から、国民はアベノミクスのカラ回りを覚悟した上で自民党を選択したのだと思う。

★根強い新制度への抵抗感
 さて気になるのは、この選挙結果から「子ども・子育て支援新制度」がどうなるかである。制度の前提が消費税10%から生み出される7000億円の財源投入だった。10%への引き上げが1年半先送りになったので、幼稚園関係者の間には解散直後から「制度開始も延びるのではないか」「最初から仕切り直しになるかも知れない」との希望的観測が飛び交った。
 なぜ希望的かと言えば、私立幼稚園には新制度に対する違和感、いや根強い抵抗感があるからである。それは㈰建学の精神による特色教育が縛られる、㈪自由でダイナミックな教育活動が制約される、㈫保護者の選択の自由が阻害される、という私学教育の根本を封殺しかねない危惧があるからだ。そして三党合意で是正されたとはいえ、民主党政権が提唱した「子育てより仕事を」という労働政策優先の思想が制度の根っこにこびり付いているからである。
 その上、幼稚園が施設型給付になると運営費が窮屈になり保護者負担も重くなるという財政的問題も明らかになってきた。とあっては「やっぱりこの制度は幼稚園を排除するものにほかならない」という意識になっても仕方がない。そのため約7割の幼稚園が認定こども園への移行を見送った。すでに幼保連携型認定こども園になっているところも、新制度に乗り換えず、幼稚園と保育所が併存する従来のブリッジ型を選択するケースが相次いでいる。そのブリッジも外し、連携型認定こども園の看板をあえて返上する動きも広がっている。幼保の混迷はさらに深まった。

★教育基本法の本来へ立ち返る動きに
 こうした危惧や混迷はあるものの、制度の開始時期について安倍首相は、選挙中何度も「予定どおり2015年4月から実施します」と明言したので、制度の一部凍結、縮小はあっても、もはや4月スタートは動かない。増税の先送りで不足する財源は何とかやり繰りする腹づもりである。そもそも新制度の法律は、公定価格で決まる給付金を市町村は確実に支出し、その裏付け財源は国がどこまでも面倒をみることになっている。財源が足りないからといって給付金が減額されることはない仕組みだ。補助金とは違うところである。財源のやり繰りは政府に任せるしかない。
 そのほか選挙中の首相の発言には「40万人分の保育受け皿をつくり待機児をなくします。併せて育児休暇の取得・延長を促進します」「職場でも家庭でも女性が輝き、活躍する社会にします」があった。そこには何としても母親を労働市場に引っ張り出そうとする姿勢はなく、子育てに専念する立場も尊重している。幼稚園教育の存在と役割を配慮したものである。
当初の姿勢から考えると、これは大きな軌道修正であり、幼児教育と家庭教育を大事にする教育基本法の本来に立ち返るものである。こうした形で新制度の根っこにこびり付いていた民主党の思想が払拭され、財政面での教育条件低下が防がれるなら、新制度に対する私立幼稚園の違和感、抵抗感は薄れていくことだろう。やがて新制度がスムーズに流れ始め、5〜10年後には大半の幼稚園、保育所が認定こども園になり、親がどちらも自由に選べる時代になっていることが期待できる。そうした新しい流れを作ったという点で、今回の選挙は大きな意味があったと言える。
幼稚園情報センター・片岡 進