「早寝早起き朝ご飯」運動の推進で

夜型社会、24時間社会を是正しよう

2008年10月21日

★オーストラリアのスーパーは17時で閉店
文科省が旗を振る「早寝早起き朝ご飯」運動が始まって3年。神山潤(東京北社会保険病院副院長)、前橋明(早大教授)氏らの指導・啓発もあって幼稚園ではこの言葉がすっかり定着したようだ。彼ら専門家に言わせると正しい生活リズムは「早起き・朝ご飯・早寝」の並びにした方がいいそうだが、これでは言葉のリズムが整わない。
幸い幼稚園の場合は95%以上の子どもに生活リズムができていると言われるが、全国調査では22時以降に就寝する幼児(6歳以下)が29%にも達するという。長時間保育が広がる保育所の影を感ぜざるを得ないが、幼稚園も油断はできない。
小学校になると22時以降の就寝が約5割、朝食抜きが約2割にもなってしまうからだ。小学校に行っても簡単に生活リズムが崩れないよう、幼稚園時代に親子のネジをよりしっかりと巻いておく必要がある。
年に1回でも子どもの生活実態についての調査を行い、結果を園だよりに発表するだけでも親の意識は高まるそうなので、それは是非、園独自のデータ集積の意味を含めて続けてもらいたいと思う。
しかし親の意識だけでは対抗できない社会構造が「早寝早起き朝ご飯」を蹴散らしているのも事実だ。テレビ、ゲーム、コンビニ、ファミレス……など夜型社会、24時間社会へ子ども達を引きずり込んでいく要素が山ほどあるからだ。
昨年夏、名古屋の教員養成専門学校の好意でオーストラリアに2週間滞在したことがある。現地で保育実習する学生に同行して、幼稚園を8園ほど訪ねたのである。自炊できるホテルに泊まりながらの取材だったが、驚いたのは都会のスーパーが17時にはピタッと閉まることだった。土日はもっと早くて15時閉店だ。スーパーで働いている人達が早く家に帰って家族と過ごせるようにとの社会的配慮である。それに合わせられない事情がある人達のために、木曜日だけ19時まで営業の配慮もあった。
レストランも同様で、ほとんどが19時には灯が消える。遅くまでやっているのは観光客向けのものだけだが、そこに行きたくても、ただでさえ少ないタクシーが夜はめっきり減るので出かけることもできない。最初は「不便な国だな」と思ったものだが、だんだんと「子どものため、家庭のためには素晴らしい国だ」と思い直したものである。
振り返れば日本だって、ほんの30年くらい前まではスーパーは18時で閉店し、レストラン・居酒屋も21時には店じまいしていたことを思い出す。
★「子どもの最善の利益」の最大課題
先日、青森県八戸市に出張した。夕食に念願の「せんべい汁定食」を食べようと、駅前の大きなビルの中にあるレストランに出かけた。18時過ぎのことである。ところが「18時半で閉店ですから」と言って中に入れてもらえなかった。そこのスタッフが、遅くまでせんべい汁が食べられる店をいくつか教えてくれたので事なきを得たが、「八戸はやるな!」と駅前レストランの姿勢に拍手を送ったものである。
2008年10月7日(火)、文科省の主催で「早寝早起き朝ご飯」運動に協力する企業の事例発表会が東京六本木で行われた。日本マクドナルド、明治乳業、大分トリニータなど5つの事例が報告され、「ヨーグルトの売り上げが増えた」「球場で応援するサポーターが増えた」など、単なるイメージアップだけでなく企業の実利益もあったとの声が聞かれた。とにかく多くの企業が運動参加に積極的なのである。
中でも熱心なのがマクドナルドで、早起き朝ご飯の大切さを説くトレイマットを2億枚も印刷したという。しかし会場からは同社への批判的意見も出た。「夜遅くまでや24時間営業している店が多いのはおかしい。この運動に参加するなら、まずそれをやめることこそ肝心だ」というものだ。
的を射てるもので、文科省が広く企業に参加を求めたネライもそこにあるのかも知れない。
「私企業の力で社会構造を変えることはできない」と同社担当者は苦しい答弁をしていたが、では誰が子どものために社会を変えることができるのだろうか。企業のCSR(社会的責任)の真髄はそこにあるのではないか。と言ってもそれに目覚めてもらうには、やはり幼稚園が頑張っていくしかないのかも知れない。
親が遅くまで働き、子どもが夜でも出入りできる店があるのが子どものために良くないことは言うまでもない。「子どもにとっての最善の利益」を考えるならば、この壁の打破を訴えることがもっとも大事だと言える。
幼稚園の力は小さいが、コツコツと運動を続けていけば、きっと子どもを持つ親の心に通じ、企業を変え、社会を変えていく原動力になっていくはずである。
誰かが、子どものために声を出し、声を出し続けなければならないとしたら、その役目を担うのは私立幼稚園しかないと思う。「早寝早起き朝ご飯」運動で私立幼稚園の存在意義をしっかり発揮し、マクドナルドを真にファミリーに愛される店に変身させていきたいものである。
幼稚園情報センター 片岡 進