★3~5歳の同時導入も要請
幼児教育無償化への理論構築と課題の検討を進める文科省の専門家会議「今後の幼児教育の振興方策に関する研究会」(無藤隆座長=白梅学園大学教授)の第7回会合が3月3日(火)開かれ、この日は国公立幼稚園と私立幼稚園の団体代表からのヒアリングを行った。
意見を述べたのは全日本私立幼稚園連合会の北條泰雅(ひろまさ)常任理事(東京都・みなと幼稚園理事長)と全国国公立幼稚園園長会の岡上(おかのうえ)直子会長(東京都・光が丘さくら幼稚園園長)の2人。
北条氏は、子どもの権利条約が求める“子どもの最善の利益”が、現状は親や企業の利益が優先されていることを指摘し、この無償化制度が子どもの権利と利益を護る象徴となるよう求めた上で、次のような意見を述べた(同氏発言の全体の要旨は末尾のタイトルをクリック)。
①無償化対象年齢は段階的に広げないで、金額が段階的になっても良いから、3~5歳児全員を同時に進めてほしい。5歳児から順次進めていく形だと、小学校入学年齢の引き下げが、なし崩し的に行われる心配がある。
②義務化と無償化とは別物と考えるが、もし無償化によって義務化の方向に向かうことがあるなら私学の独自性の担保を明確にしてほしい。
③無償化打ち出しを機に、親と子を切り離すような少子化対策(0歳児保育、病児保育、13時間保育など)を見直してほしい。これら機能はごく限定的に使われるべきもので、一般化しては子どもの利益につながらない。
④無償化は私立幼稚園の経営を安定させ、合理的理由がないまま放置されている公私間の財政格差解消に資するものと考えている。教職員の待遇を改善できることで教育内容の充実をはかることができる。
★義務化への移行は慎重に
国公立幼の岡上氏は次のような意見を述べた。
①無償化が、人間をどう育てていくかという人材育成のもとになるものであってほしい。実現すれば、幼児教育の重要性、大切さについての国民の意識が高まり、教育内容の充実につながると期待できる。
②無償化によって就労支援がさらに促進され、フルタイムで働く母親が増えることになってはいけない。ワークライフバランスとは、両親ともが子育てを楽しみながら仕事ができることだ。そんな社会的風土の醸成が必要だ。
③無償化が幼児教育義務化に向かう可能性は高い。幼稚園の立場から考えれば、その方が良いとも言える。しかし発達の差が大きいこと、子どもが極めて少ない過疎地の状況を考えると義務化は慎重にすべきだ。
④無償化のための財源が一般財源化された場合、自治体によっては幼稚園の存在そのものが危うくなる心配もある。幼稚園に対する国の明確な姿勢が肝要だ。
(注:両団体が資料として提出した「無償化に関する意見書」は末尾のタイトルをクリックして参照ください)
★認可外施設の扱いで意見分かれる
この後、8人の委員との間で質疑、意見交換が行われたが、新たな発想として注目されたのは北條氏が「我々が考えている無償化とは、単純に公立も私立も現在の保育料を無料にするということではない。園児1人あたりの公費投入金額が公立70万円、私立20万円という格差を埋め、幼児教育の条件を揃えて内容を充実していくことにある」と述べた点だ。
これは私立幼稚園の積年の主張であり、私幼関係者は誰もが当然のことと考えているが、委員の間では、公私財政格差はそのままに現行保育料を無料にするだけのイメージが支配的だった。しかしそれでは国民に対して「見せかけの無償化」になってしまう。現実に私立と公立の間の負担格差は残り、国民を裏切ることにもなってしまうだろう。ただ私立幼稚園側の主張を受け入れるとなると、現在想定している財源の倍以上が必要になる。同研究会にとっては大きな課題が突きつけられた格好だ。
もうひとつは、委員の間でも意見の分かれていた認可外施設に対する考え方だ。
北條氏は「施設に通わない子どもを含めすべての子どもを対象とし、幼児教育の場を広げていくのが望ましい」と述べた。私立幼稚園には無認可施設からスタートしたものが少なくなく、そうした経緯が背景にあるとも窺える。また就園奨励費と経常費補助による現行スキームを拡大する形だと、私立の中でも102条園との差が広がるという懸念もあってのことだろう。
これに対して岡上氏は、「あくまで幼児教育の無償化なのだから、公に認められた環境、内容を備えた施設に通う子どもだけが対象になるべきだ」と述べ、意見が分かれた。
すべての子どもを対象にするとなると“クーポン(ヴァウチャー)制構想”が浮上してくることになり、法体系も財政制度も大きく変わってくる。また、根本命題である「子どもにとっての最善の利益」の視点をどこに置くのかを問われる問題でもある。これまた研究会にとっては大きな課題を突きつけられたと言えよう。
※北條氏の発言要旨全文(PDF)はここをクリック。⇒
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※全日本私立幼稚園連合会の「無償化についての意見」(PDF)はここをクリック。⇒
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※全国国公立幼稚園園長会の「無償化に関する意見」(PDF)はここをクリック。⇒
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幼稚園情報センター代表 片岡 進