保育所と幼稚園が初の合同記者会見

一体化は拙速を避け、現場の声にもっと耳を

2010年5月13日

★「幼保一体化」に「保幼一体化」でアピール
全日本私立幼稚園連合会(吉田敬岳会長/加盟7800幼稚園)と全国私立保育園連盟(黒川恭眞会長/加盟7100保育所)は2010年4月30日(金)、東京赤坂のANAインターコンチネンタルホテルで共同記者会見を開き、「乳幼児期の子どもたちの教育・保育についての総合的な施策に関する共同緊急声明」を発表した。
これは4月27日(火)に行われた「子ども・子育て新システム検討会議」の第1回閣僚会議を受けたもので、現場を担う民間団体が、ヒアリングとは別に一般市民に向けて意見表明する形となった。
記者会見に出席したのは、全日私幼連が吉田会長、北條泰雅常任理事(全日私幼研究機構副理事長)、香川敬副会長、尾上正史副会長。全私保連が黒川会長、近藤遒副会長、菅原良次常務理事、木原克美常務理事の計8人。
声明の骨子は下記のとおり。(全文は添付資料参照)
①0歳から18歳までのすべての子どもに、「子どもの最善の利益」を最優先する良質の環境・条件が必要。
②保幼小の連携の重要性を社会全体で再確認することが必要。
③国のあり方と将来に大きく影響する問題なので、拙速を避け、仕組みを慎重につくりあげるべき。
④ワークライフバランスの実現による子育て環境の整備が不可欠。
⑤小学校入学前の子どもに対する公的投資をOECD諸国並みに充実させることが必要。(注:日本の投資額はOECD平均より約21%少なく最低ラインにある)

★政府の視点は子どもより経済と労働政策
私立同士とはいえ、保育所と幼稚園の全国団体が共同で意見表明するのは初めてのこと。しかし双方の考え方が一致しているわけではない。全私保連は私立保育所に対する補助金が一般財源化され、さらに現金給付と現物給付の財源がまとまってしまうことに強く抵抗している。一方全日私幼連は、幼稚園から大学まで続く学校教育体系から幼稚園だけが分離されて“子ども家庭省”に移されることが一番の懸念材料だ。
そこで、これらの問題にはあまり触れず、「国家100年の大計を決める重要な改革は、もっと意見を出し合って十分に議論を重ねるべき」の点で足並みを揃えた。実際、3月から議論を始めて6月に基本的結論を得るスケジュール、現場団体からの意見聴取を20分で済ませるヒアリングは乱暴としか言いようがない。
この点について全日私幼連は、「検討会議の閣僚や委員が保育所を視察したとのニュースは聞くが、幼稚園を訪ねたという話は確認できていない。幼稚園の現状を誰も見ずして議論を進めることは理解できない」と反発している。また全私保連も「30年、50年先まで通用するシステムにしてほしい。急いで作っても、すぐに見直しをするようなものでは現場は混乱するし我々もやっていられない」と腰を据えた検討を求めている。
もうひとつ両団体で一致していることがある。それは「日本の子どもをどう育てていくか、という視点が一番先になければならない」ということだ。ところが民主党政権は経済対策、労働政策が先走って、「子どもを預けて、それもできるだけ長く預けて、親はとにかく働いてほしい」という意識が前面に出ている。これには保育所、幼稚園とも強い違和感を持っている。

★共通用語は「幼保」より「保幼」が適切
せっかく機会ができた組織運動の保幼一体化である。具体論では違いも出てくるが、こうした共通の思いを大事にして、今後はシンポジウムを共催するなど政府やメディアへのアピールを強めてもらいたいものだ。
もうひとつ幼稚園情報センターから質問したことは、保育所と幼稚園の並びである。声明文のタイトルは「幼稚園と保育園による共同緊急声明」と幼稚園が先になっているが、本文中では三カ所で保育園が先になっている。「一緒に運動を進めていく上で用語の統一は大きな意味を持つ。五十音順では保が先、年齢順でも保が先。だったら幼保ではなく保幼とするのが筋ではないだろうか」との問いに、両団体から「そのとおりだ」との回答を得たことを付け加えておく。

【添付資料】幼稚園と保育園の共同緊急声明(PDFファイル)
幼稚園情報センター代表・片岡 進