「幼保一体化」で基本方向示す

新「こども園」構想とはどのようなものか

慎重議論へ「年齢区分構想」をぶつけるべし

2010年5月20日

★プロセス省き一気にオール一元化へ
幼保一体化の道筋を探る政府の「子ども・子育て新システム検討会議」は4月27日(火)、共同議長(仙谷由人国家戦略担当相、福島瑞穂少子化担当相、枝野幸夫行政刷新担当相)を含む閣僚委員を交えた初会合を開き、計6回におよぶ作業グループ(主査=泉健太内閣府大臣政務官)の検討を踏まえて、その基本的方向(案)を確認した。主な中身は、
①幼稚園教育要領と保育所保育指針を統合した「こども指針」を創設する。
②幼稚園、保育所、認定こども園を「こども園」に一本化する。
③関連する予算、補助金を「子ども・子育て基金」にまとめ財源と権限は市町村に移譲する。
④小学校入学前の子どもを一括所管する「子ども家庭省」を創設する。
以上の四点である。(注:「 」内の名称はすべて仮称)。
この案をさらに検討会議で叩く気配は今のところなく、事務局で文案を整理し、閣議決定を経てほぼこの形で民主党の参院選マニフェストに盛り込まれる公算が高い。
当初の予測では、幼保連携型以外への補助金導入や条件緩和で現行の認定こども園制度をテコ入れし、まずはできるだけ多くの保育所、幼稚園を認定こども園に移行させ、それから次の段階に進むものと思われていた。しかしこの案ではその移行プロセスを省き、一気にすべてを「こども園」に転換させる方策と読み取れる。
それはある意味、本来の一元化の姿であると言える。また「保育内容」「名称」「財源」「所管」のすべてを一元化させる点でも思い切った打ち出し方である。自民党政権では、族議員の存在もあって幼稚園・保育所の現場の意向を大事にしてきた。そのために両者の壁をいつまでも引きずって一元化が果たせなかったが、民主党政権の構想は、そのしがらみを血も涙もなく断ち切るものと言える。

★シンプル策にはシンプル案で対抗
これを受けて4月30日(金)に開かれた全日本私立幼稚園連合会と全国私立保育園連盟の合同記者会見では、この「こども園構想」をどう考えるかと問われて、両団体とも「こども園の中身がわからないので是非をコメントすることはできない」と答えた。
たしかにそのとおりだが想像してみることはできる。たとえば幼稚園、保育所という名称が廃止され、昨日までの○○幼稚園が「○○こども園」に、△△保育所も「△△こども園」になることが想定される。だが名前を揃えたからと言っても中身まで揃えるには時間がかかるだろうから、しばらくは幼稚園型こども園、保育所型こども園が存在する形になるだろう。しかし「幼保一体化」の言葉が、あくまで0歳から小学校入学前まですべてを対象とすることにこだわるなら、いずれその形態は今の保育所の姿に集約され、それぞれの家庭の事情に応じて親が子どもを迎えにくる形になるだろう。
これは一般国民にとって現行制度よりずっとわかりやすいシンプルなスタイルと言える。もちろん幼稚園も保育所も異論があるだろうが、「教育内容がどうの」「財源がどうの」「環境整備がどうの」と異を唱えても、このシンプルさには到底太刀打ちできない。

★今こそ「0~2歳は保育所、3~5歳は幼稚園」の旗を

ではどうするか。幼稚園、保育所の実績と伝統を守るため、新こども園構想に太刀打ちしようとするなら、こちらもわかりやすいシンプルな構想を打ち出さなくてはいけない。それは「0~2歳は保育所、3~5歳は幼稚園」という年齢区分一元化である。
これなら幼稚園、保育所の名称が残せるし、より現実的でわかりやすい。その理由は、
①現状の施設がそのまま生かせ、余分な施設改修の費用がかからない。
②0歳から6歳まで発達差の大きい子どもが同居しないので教育活動も生活環境も落ち着く。
③養護の機能と教育・保育の機能が分かれ、双方の機能をさらに充実しやすくなる、などである。
新こども園構想に対して、重箱の隅をつつくような議論をしかけても相手にされず、構想はそのまま突っ走っていくだろう。全日本私立幼稚園連合会も全国私立保育園連盟も「子どもの健全な成育のため、100年の国家大計のため拙速を避けてほしい」と望んでいるが、この動きを止め、慎重な議論を期待するなら、今こそ「0~2歳は保育所、3~5歳は幼稚園」というわかりやすい対案を掲げ、国民に訴えていくしかない。時間はない。全国の私立幼稚園はただちにこの旗を立て、地元の国会議員、首長、地方議員に働きかけてほしい。

【添付資料】子ども・子育て新システムの基本的方向案(PDFファイル)
幼稚園情報センター代表・片岡 進