世界の最新優秀施設60選に入り

「ふじ幼稚園」「ゆうゆうのもり幼保園」に文科大臣表彰

ユニーク園舎がOECDで最高評価

2011年1月31日
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表彰式後の記念撮影。前列左からふじ幼稚園・加藤久美子副園長、同・加藤積一園長、笠浩史文科大臣政務官、ゆうゆうのもり幼保園・渡辺英則理事長&園長。

表彰式後の記念撮影。前列左からふじ幼稚園・加藤久美子副園長、同・加藤積一園長、笠浩史文科大臣政務官、ゆうゆうのもり幼保園・渡辺英則理事長&園長。

ドーナツ型園舎の屋根の上で遊ぶふじ幼稚園の子ども達。足が自然に走り出すので、いつまでも走り、底抜けに笑う。

ドーナツ型園舎の屋根の上で遊ぶふじ幼稚園の子ども達。足が自然に走り出すので、いつまでも走り、底抜けに笑う。

吹き抜けの階段ホールに張られた空中ネット。右に左に、上に下にと空間を自在に動き回れるのがゆうゆうのもり幼保園の魅力だ。

吹き抜けの階段ホールに張られた空中ネット。右に左に、上に下にと空間を自在に動き回れるのがゆうゆうのもり幼保園の魅力だ。

東京都立川市・ふじ幼稚園(加藤幹夫理事長、加藤積一園長)と横浜市都筑区・ゆうゆうのもり幼保園(渡辺英則理事長&園長)が「第1回学校施設関係者文部科学大臣表彰」を受賞、その表彰式が2011年1月14日(金)文科省内で行われ、笠浩史大臣政務官(衆議院議員・神奈川9区)から表彰状が渡された。

★四つのテーマと回遊性のキーワード
受賞の理由は両園の独特な園舎建築と、その空間・環境を生かして子どもたちの遊びが存分に発展していることが評価されたもの。といっても先に評価を下したのはOECD(経済協力開発機構)だった。OECD教育局の効果的学習環境センター(CELE)が「学校施設好事例集(第4版)」を出版するにあたり、世界各国から60件を選定した。日本からは2件が選ばれたが、それがふじ幼稚園とゆうゆうのもり幼保園だった。特にふじ幼稚園は全事例の中で最高点を得たものである。
そこで早速OECDを追認する形で文科大臣表彰となったわけだが、この表彰は2010年3月に学校施設整備指針が改訂されたのを機に、教育活動における施設の有用性を高めようと同年12月に新設されたもの。奇しくもその記念すべき第1回の受賞が二つの私立幼稚園になったことで、遊び環境づくりに対する日本の私立幼稚園の進んだ取り組み姿勢が広く認識される形になった。
今回OECDが設定したテーマは①多様なニーズに対応できる革新的デザイン、②自然環境と共存する持続可能性、③教育活動への目的適合性、④安全性の四つだが、もうひとつのキーワードに「回遊性」があった。子どもたちの動きが限りなく連続するイメージだが、そのキーワードにも両園がピタリとフィットしたということである。

★屋根の上のマラソンランナー
手塚建築研究所の手塚貴晴・由比夫妻が設計したふじ幼稚園は、楕円ドーナツ型の園舎と屋根の上の活動が特徴。1周約200メートルの屋上トラックを子どもたちは走り続ける。まるで雲の上、空の中を走っているような感じになり、嬉しくて自然に足が走り出してしまうのである。
旧園舎当時の園庭の樹木をそのまま残したため、屋上にはケヤキの大木が何本も突き出ている。当然下の部屋も突き抜けているわけで、子どもたちは部屋にいながら木肌に触れることができる。
また園舎内の照明は紐スイッチの裸電球。井戸端談義をしながら雑巾掛けを行い、雨だれの滝を眺める楽しみもあり、忘れかけた日本文化を思い出させる工夫が随所にある。

★動と静の冒険ファンタジー
環境デザイン研究所の仙田満氏(元日本建築学会会長)が設計したゆうゆうのもり幼保園は、その名のとおり学校法人の幼稚園と社会福祉法人の保育所が合体した施設。渡辺学園が設置する港北幼稚園のそばに、横浜市が総合施設モデルをつくることになり、その設置・運営者を公募した。「近くにできるんなら自分でやった方がいいだろう」と手をあげて実現した施設である。認定こども園にもなっている。
同園の特徴は冒険心にある。吹き抜け空間に張られたネットの周囲には猫のように歩く通路があり、そこからネットに転げ落ち、動き回る姿はまさにスパイダーマンだ。園舎内から園庭の砦までぐるりと動き続ける回遊路もあるが、こちらは梯子や抜け穴を通って上にも下にも自在に動くことができ、さながら海賊船か忍者屋敷をいるような気になる。
一方で外の緑を全面借景したランチホールがあり、そこで奏でられるピアノの音は子どもの施設とは思えない幻想的な響きがあり、子どもたちは落ち着いて食事を楽しむ。この動と静が同居する空間も同園の魅力といえる。
なおOECDからふじ幼稚園に対する表彰は1月19日(水)、文科省の講堂で行われ、設計した手塚夫妻らが記念講演を行った。

※両園の詳しい様子は『月刊・私立幼稚園』の幼稚園レポートをご覧ください。
幼稚園情報センター・片岡 進