全日私幼連の定時総会

被災幼稚園の復興支援に全力を

幼保一体化問題にも細心の注意

2011年6月12日

★死傷不明89人、施設損壊707園
全日本私立幼稚園連合会(香川敬会長)は2011年5月25日(水)、東京市ヶ谷・私学会館で定時総会を開き、東日本大震災の支援状況、幼保一体化問題の経過などについての報告を確認した上で、2011年度の事業計画を決定した。
この中で大震災については園児・教職員の死傷・行方不明者数は89人、施設損壊等が707園と報告され、また総会前日までに寄せられた義援金は約4億5千万円で、被災地の団体を通じて早くから順次支給されたことが報告された。そして「被災地における幼児教育の灯をともし続ける」決意を込めた特別声明(添付PDF)を採択した。
5月11日から再開された子ども・子育て新システム検討会議の幼保一体化をめぐる議論については、乳幼児を対象とするすべての施設を「こども園」と総称し、現行の幼保連携型認定こども園を「総合施設」とする新たな制度案が報告されたが、依然として幼稚園教育の存続が危ぶまれる状況にあることから、その動向に細心の注意を払い、全身全霊で取り組むことが確認された。
3年目を迎えた「こどもがまんなかプロジェクト」は、2010年度にサイトの立ち上げとフォーラム開催で弾みをつけたことから、この勢いを衰えさせないよう地道に継続していくことを申し合わせた。
総会の冒頭、香川敬会長および前会長の吉田敬岳常任理事から行われた挨拶の内容は下記のとおり。

★子々孫々まで語り伝える使命を
【香川敬会長の挨拶】
 東日本大震災への支援体制を整える中で大変ありがたかったのは、諸先輩が10数年かけて「災害基金」を用意してくださったことです。改めて深く感謝申し上げます。そして全国の保護者、子ども達からたくさんの義援金が寄せられたことには言葉もありません。
 私の妻は青森県八戸市から山口県に嫁いでくれたのですが、実家は第二魚市場のすぐそばにあり、多くの親族・知人が被災しました。その八戸で40年前、漁網製造会社に勤める熊谷拓治*という青年が、ノルウェーの会社に出向しました。その体験から痛感したのは日本人は自国の歴史、自分の町の歴史をあまりよく知らないということでした。
 そこで彼は帰国すると丹念に県や町の歴史を勉強しました。すると150年前、20年にも及ぶ大飢饉があったこともわかり、それらを記録し直して新たな社会開発運動を展開し、町づくりに生かしてきました。1000年に1度と言われる大災害、ここで私たちが大事にすべきことは、この体験を子々孫々にしっかりと伝え残していくことです。
 震災のあった3月11日、私たちは東京で全国理事会を開いていました。被害の第一報を聞いたとき、宮城県の村山十五会長(全日私幼連副会長)、岩手県の坂本洋会長(同広報委員長)、福島県の関章信会長の青ざめた表情を忘れることはできません。大震災への支援と対応はまだまだ続きます。どうかご協力ください。
 一方で幼保一体化の問題にも細心の注意を払い続けなくてはいけません。これまでに47都道府県すべての団体代表が、国会議員の方々に私立幼稚園の訴えを届けてくれました。引き続き全身全霊で取り組んでまいります。東日本大震災と幼保一体化、全国すべての私立幼稚園が一丸となって乗り越えていきましょう。
*編集部註:熊谷拓治氏(72)は現在、八戸漁業指導協会会長、八戸みなと漁業共同組合組合長、青森県遠洋沖合漁業振興協議会会長、熊谷漁業(株)社長などを務めている。。

★ふたつの難儀に、まず自分ができる行動を
【吉田敬岳前会長の挨拶】
 前会長の立場で何か話をするようにとの指名をいただきました。被災地の子ども達が、1日も早く子どもらしい生活を取り戻すことができるように。それが私たちの共通の願いであり、そのために香川会長はほとんど東京にとどまって支援活動に取り組んでいると聞いています。頭が下がります。苦渋の決断も次々にあることと思いますが、私立幼稚園の力が問われる時でもありますので、執行部の皆さんには頑張っていただきたい。
 もうひとつ幼保一体化の問題も、私立幼稚園100数十年の歴史を揺るがす大きな問題です。香川会長のリーダーシップへの期待が大きくなりますが、ともすると「会長だから、執行部だからやるのが当然」と思っている人も多いように思います。あるいは「全日私幼連から指示がくれば動けばいい」と考えている人も多いようです。
 米国のクリントン元大統領は就任の際、ケネディ元大統領の就任演説を引いて、「国が自分に何をしてくれるかを求めるより、自分が国に何ができるかを考えてほしい」と呼びかけました。私たち私立幼稚園も、この二つの大きな難儀を前にして、まず自分たちが考え行動して、その上で「みんなで一緒に頑張るぞ!」のかけ声で進んでいきましょう。

なお総会には来賓として、清水潔文部科学事務次官(高木文科相が国会答弁のための代理)、全日私幼PTA連合会の河村建夫会長(自民党衆議院議員、元文科相)、民主党私学振興推進議員連盟の川端達夫会長代行(元文科相)、自民党幼児教育議員連盟の中曽根弘文会長(自民党参議院議員会長、元文相)が出席し、それぞれ挨拶を行った。

※添付資料:「東日本大震災に関する特別声明」(PDF)
幼稚園情報センター・片岡 進