★ボタンかけ違いのまま最終まとめ
民主党政権が推進する「こども園構想」がいよいよ最終段階に入った。2012年1月31日(火)、子ども・子育て新システム検討会議の基本制度ワーキングチーム(園田康博座長=内閣府大臣政務官)最終会合(第20回)が開かれ、そのあと2月13日(月)、座長と事務局によって文章整理された「基本制度とりまとめ」が公表された。2010年9月から1年半、約60時間におよぶ議論の最終まとめとなるものである。
これを受けて政府は3月2日(金)、全閣僚が出席する少子化社会対策会議と新システム検討会議の合同会合を開き、「基本制度とりまとめ」を了承すると同時に、「子ども・子育て新システム法案骨子」を決定した。会議の中で野田総理は、「この子ども・子育てに関する法案こそ民主党政権の真骨頂である。税制改革法案と一緒に提出することになるが、必ず成立させるよう総力を結集してほしい」と閣僚を督励した。
たしかに検討会議全体では会合は計49回におよび、時間をかけて議論してきたのは事実である。しかし、子育て中の母親を工場にかり出すことで経済成長をはかろうとする労働政策から発想されたボタンのかけ違いは歴然。政府与党側と現場関係者の話は最後までかみ合わなかった。ところが、「この最終まとめには納得できない」と最後まで抵抗したのは北條泰雅(全日私幼連副会長)、秋田喜代美(日本保育学会会長、東京大学大学院教授)、小田豊(国立特別支援教育総合研究所理事長、元文部省主任視学官)の三氏だけで、そのほかの委員は「ともあれ、ひとつの形にまとまったのだから良かった」と表情を緩めていた。時間のなせる技かも知れない。
当初の民主党政権は、総選挙大勝の余勢をかって「ご意見無用、切り捨て御免」の強権姿勢だったが、途中から辛抱強く意見を聴くスタイルに変えた。まさに粘り勝ちであり、とりあえずここまでの結果は、私立幼稚園としても受け入れざるを得ないのが現実だ。
法案は3月末までに消費税アップ法案と一緒に国会に提出され、6月の会期末までに成立。2015年4月から本格施行という段取りだ。成否は予断できないが、野田内閣の粘り腰に乗せられていく可能性はあると言わざるを得ない。
★複雑な構想のポイントは五つ
その中身を改めて確認してみよう。
現行の保育所を二層構造にして「0~2歳は保育所、3~5歳は幼稚園」とすれば、誰にでもわかる単純明快な制度になるのに、これを無理に複雑怪奇なものにしたのが今回の「こども園構想」だ。それゆえ「何度聞いてもわからない」と思う人が多いが、主なポイントを抜き出すと次の5つになる。
①0~5歳の乳幼児の養育と教育に関わる施設は、認可外を含めすべて「こども園」と総称する。
②幼稚園と保育所の両方の機能を備えたものを「総合こども園」とする。3~5歳を対象にする施設でも良い。現行0~5歳を受け入れている保育所および幼保連携型認定こども園、地域裁量型認定こども園は2015年から3年以内に総合こども園に移行する。
③制度を維持する財政は、「旧こども手当」(現金給付)と「こども園給付」(現物給付)でまかない、どちらも子ども本人に対する直接給付とする。ただし「こども園」の指定を受けない私立幼稚園には現行の私学助成を継続する。
④「こども園」および「総合こども園」には株式会社、NPO法人の参入を認め、社会福祉法人、学校法人と同等の扱いとする(=イコールフッティング)。
⑤制度の実施主体は市町村。「こども園」「総合こども園」の指導管理は市町村が行う。ただし「こども園」の指定、「総合こども園」の認可、こども園移行前の私立幼稚園の指導管理は都道府県が行う。国および地方公共団体に「子ども・子育て会議」という審議会を置き、制度の効率的運用をはかる。
★全私学連合が株式会社参入に反対表明
この中で学校関係者が特に問題視しているのが株式会社の参入である。認可保育所の設置体に株式会社が認められるケースは、すでに相当数の都道府県に広がっているので、それが「こども園」に移行するのは問題ないと言わざるを得ないが、ほぼ自動的に「総合こども園」に移行するということは、ズルズルと学校教育に株式会社が参入することを意味する。幼稚園と並んで「総合こども園」が学校教育法第一条に位置づけられ、私立学校になるということである。
しかしそれは、土地・建物等を寄付行為して学校法人となり、公教育としての公共性、永続性、安定性を担保してきた私立学校の本質と根本的に違ってくる。また株主配当が認められることで、公費投入から得た剰余金が株主の個人資産形成に使われることになる。これは役員報酬を禁じる私立学校法とも矛盾する。
そこで全私学連合(清家篤代表=慶應義塾塾長)は2月15日、民主党の私学振興推進議員連盟の総会に出席して「学校教育への株式会社参入に反対」を表明し、同議員団といっしょに平野博文文部科学大臣を訪ねて申し入れた。
しかし、この問題はこれまでに何度も議論された末に内閣府、経産省、厚労省が腹をくくった事柄なので、文科省がいくらがんばっても法案から削除される可能性はない。あとは国会での法案審議で、どのような議論が交わされるか注目されるところである。
※120302少子化社会対策会議(
政府ネットTV)
※子ども・子育て新システム法案骨子(
PDF)
幼稚園情報センター・片岡 進