具体化議論は参院選の後に

トーンダウンの幼児教育無償化

全日私幼連、署名運動で機運盛り上げへ

2013年5月12日
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中曽根弘文(なかそね・ひろふみ)

中曽根弘文(なかそね・ひろふみ)
参議院議員(群馬県選挙区)。自民党参議院議員会長。同幼児教育議員連盟会長。1945年11月生まれ群馬県高崎市出身。慶大商学部卒。旭化成社員、国会議員秘書を経て政治家に。外務大臣、文部大臣、科学技術庁長官、首相補佐官などを歴任。中曽根康弘元首相の長男。

★マスコミ、保育所団体が反発
2012年12月の総選挙で自公政権が復活し、幼児教育無償化の期待ムードが高まった。しかし子ども子育て支援三法による「新こども園制度」が動き出した時期でもあり、無償化の理解は深まっていない。それどころかマスコミ、野党、保育所団体からの反発が強く、その声はトーンダウンした感である。
第二次安倍政権が誕生した直後、下村博文文科相は記者会見の冒頭で「高校無償化の見直し」と「幼児教育無償化の早期実現」を取り上げた。前の民主党政権が、自民党が掲げる幼児教育無償化を蹴飛ばし、その代わりに高校無償化を推進させたことへの意趣返しである。
また国会本会議の代表質問では、小池百合子元防衛相(自民党広報本部長)、中曽根弘文元外相(同参議院議員会長)、橋本聖子参院議員(同参院政審会長)らが次々に幼児教育無償化の実現を求めた。これを受けて政府は3月25日に少子化担当相、文科相、厚労相らによる関係閣僚実務者会合を開き、参議院選挙の前に具体策を提示することを申し合わせた。しかしその後の動きが見えてこない。
逆に風当たりが強まってきた。マスコミは「幼児教育の大切さはわかるが、今の緊急課題は待機児童の解消だ。優先順位を間違えてはいけない」「消費税の引き上げで新たな子育て支援制度の追加財源(7000億円)をやっと確保できているのに、さらに無償化の財源など無理な話だ」と揃って批判的だ。
野党、特に民主党が反発するのは「自民党は我々が実現させた高校無償化をバラまきだと批判し、所得制限をかけることを打ち出している。それなのに所得制限なしで幼児教育を無償化するのは自己矛盾も甚だしい」ということ。そして保育所団体は「認定こども園、施設型給付を柱とする新たな子育て支援制度に無償化を絡めるのは筋違いだ。3年余にわたる議論の中で、そんな話は一度も出てこなかった。財源の内部調整など許されるものではない」と突っぱねている。
こうした状況の中で無償化の旗を振り続けることは、参院選挙でもプラスにならないと自民党が考え、声を低くしたものと思われる。できれば「国家百年の大計には、良質の幼児教育をすべての子どもに提供することこそ必要。すぐに始めるべき」との論陣を堂々と張りたいところだが、教育論は考え方の幅が広ので、慎重に構えないとやぶ蛇になる心配がある。つまり幼児教育無償化は、しばらくお茶を濁したままにして、本格議論は参院選後に持ち越そうというのが自民党の肚のようである。
しかし反発が強いままでは、参院選後でも議論を持ち出すのは難しい。推進勢力が必要である。そこで全日本私立幼稚園連合会(香川敬会長)は、幼稚園児保護者を中心とした署名活動を始めた。「署名活動にどれほどの力があるだろうか?」と疑問視する向きもあるが、幼児教育無償化というテーマを、当事者である幼稚園関係者に知ってもらうことでは大きな意味がある。幼稚園児の親から「それって何のこと?」という声が聞かれたのでは話にならないからだ。
膨大な借金地獄の日本である。幼児教育無償化は、その借金を増やすことになりかねない心配がつきまとう。それでもなお、他の予算を削ってでも必要だとの理解を得ていくのは時間のかかることであるが、幼稚園の署名活動がその突破口になることを期待したい。
全日私幼連はPTA新聞の4月号で無償化の特集を組んだ。その中に幼児教育の重要性と各国の状況に関する秋田喜代実氏(東京大学大学院教授)のコラムが載っている。参考までにそれを添付する。併せて参議院本会議での中曽根弘文氏の代表質問から幼児教育無償化に関する部分も添付する。

※秋田喜代実氏のコラム「世界の幼児教育事情」(PDF)

※中曽根弘文氏の参院本会議代表質問(音声YouTube)

幼稚園情報センター・片岡進