430万人の署名を安倍首相に手渡す

全日私幼PTA連、幼児教育無償化で全国大会

森元総理、記念講演で子育てに厳しい指摘

2013年7月17日
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河村建夫(かわむら・たけお)

河村建夫(かわむら・たけお)
全日私幼PTA連会長、自民党選挙対策委員長、衆議院議員(山口3区)。1942年11月生まれ山口県萩市出身。慶大商学部卒。文科相、内閣官房長官などを歴任。

安倍晋三(あべ・しんぞう)

安倍晋三(あべ・しんぞう)
内閣総理大臣。自民党総裁。衆議院議員(山口4区)。1954年9月生まれ東京都出身。成蹊大法学部卒。自民党幹事長、内閣官房長官などを歴任。

森喜朗(もり・よしろう)

森喜朗(もり・よしろう)
元内閣総理大臣、元衆議院議員(石川2区)、全日私幼PTA連最高顧問。1937年7月生まれ石川県根上町(現・能美市)出身。早大商学部卒。文相、通産相、自民党幹事長などを歴任。1998年から2009年まで全日私幼PTA連会長を務めた。

★“百万一心”の結束で
 全日本私立幼稚園PTA連合会(河村建夫会長=自民党選挙対策委員長)と全日本私立幼稚園連合会(香川敬会長=山口県・鞠生幼稚園理事長)は2013年7月2日(火)13時から、東京虎ノ門のホテルオークラで第28回のPTA全国大会を開き、安倍晋三首相ほか政府与党関係者に幼児教育の無償化を訴えた。
 会場には若い母親を中心に各都道府県から約1500人の代表が詰めかけ、来賓には安倍首相、下村博文文科相、中曽根弘文幼児教育振興議連会長ほか約60人の国会議員が参列。正面看板下に積み上げられた430万人の署名簿を前に幼児教育無償化の推進を誓い合った。民主党政権時代は首相の出席がない大会だったが、自公政権の復活で、首相を迎えることができるようになった。
 まずPTA連の河村会長は「少子化が進み、親や社会の子どもにかける思いはますます強まっている。私たちは、何ごとも子ども中心に考えようという“子どもがまんなかプロジェクト”を展開しているが、その機軸になるのは家庭です。そして幼稚園が大事です。幼稚園は子どもと共に親も成長できる貴重な場です。しかしその教育費負担は大きく、保育所との財政格差も大きい。そこで念願である無償化へ動き出した。この大会はそのスタートを後押しするものです」と述べた上で、「安倍首相が行う“三本の矢”は戦国武将・毛利元就の家訓ですが、もうひとつ“百万一心”という家訓があります。一日一力一心を示すもので、人々が皆で力を合わせて日々努力すれば何事も成し得るということです」と無償化実現への一致結束を呼びかけた。
 続いて全日私幼連の香川会長は「民主党政権が提案した“こども園構想”があのまま実現したら、日本の子どもの多くが12時間以上も施設で過ごすことになり、諦めから自己肯定感を喪失してしまったかも知れない。それを自民党、公明党の先生方が食い止めてくださったのは本当にありがたかった」「これからの教育は、応用力、問題解決能力を培っていくのが課題です。その起点となるのが幼児教育です。たとえば絵本は、親や先生が同じ本を何百回も読んであげることで、子どもは言葉を覚え、想像力、観察力、好奇心を育んでいく。この幼児教育を大事にしなければいけません」と述べた。

★2014年度が無償化の第一歩に

 これを受けて安倍首相は「質の高い幼児教育をすべての子どもに提供する。これが国づくりで一番大事なことです。私は第一次安倍政権の時に教育基本法を改正し“幼児教育が基本”であることを明確にしました。現在進めている教育再生は、教育基本法に示された中身を具現化していくもので、幼児教育無償化は大きな柱のひとつです」と述べた。
 安倍首相が経済成長戦略の一環として打ち出している「待機児童の解消」「三年間の育児休業」には触れられなかったが、三年間の育児休業は幼稚園預かり保育事業との連動によって機能するものなので、できれば触れてほしかった。しかしそこまで踏み込むと、幼稚園関係者の我田引水と受け止められる心配もある。あえて触れなかったのは安倍首相の見識といえよう。
 また下村文科相は、民主党政権によって削減された幼稚園就園奨励費の予算を従前のレベルに戻したことを報告した上で、2014年度は同制度を拡充し、これを無償化の第一歩とすると述べた。具体的には上の子が小学校3年生以下の場合、二番目の子の幼稚園授業料を半額に、三番目を無料にするというもの。すでに2013年度予算でその形になっているが、年収630万以下という所得制限を廃してすべての子どもを対象にする。このための予算増300億円を概算要求に盛り込むことを約束した。
(※主催者および来賓挨拶の詳しい内容は添付の動画サイト・幼稚園情報センターNEWSをご覧ください)

★子ども達にもっと辛い体験を

 第二部は講演会。第一線の研究者や子育て中のタレントを招くことが多いが、今回の講師は前のPTA連の会長で、今も幼児教育振興の力強いフォワード役を務める森喜朗元総理。ベテラン政治家の話を聞くことで、幼児教育、家庭教育の肝心な部分を改めて感じ取ろうとの趣向である。
 戦地から帰還した父親の言葉「滅私奉公」、政治の師である坂田道太元衆議院議長から受け継いだ「人が先、自分は後」の教えを紹介した後、森元総理は「今の日本の高校生は、他国の同年代に比べると自分の親を尊敬する気持ち、学校の先生を尊敬する意識が世界最低レベルです。そのうえ“自分はダメな人間だ”と思う人が非常に多い。これでは世界をリードしていく国にはならないでしょう。家族や仲間と一緒に困難を克服して喜びを得た体験が少ないからだと思う。これからの幼児教育、家庭教育で改めて望まれることは、子ども達にあえて辛い体験、苦しい思いを、たくさんさせることです」と訴えた。笑いの絶えない講演でもあったが、現状の親子関係、教育現場に突きつけた厳しい指摘だった。
 その厳しさを噛みしめつつも、幼児教育無償化の実現、そして6人の子ども、2人の孫を持つ子育て世代の日本代表・橋本聖子参議院議員再選への気勢を上げ、15時30分、PTA大会は幕を閉じた。

※主催者・来賓(計6氏)の挨拶(YouTube動画)
※森喜朗元総理の講演の一部(YouTube動画)
※幼児教育の無償化を求める大会決議(PDF)
幼稚園情報センター・片岡進