鬼怒川温泉で公益社団の第1回総会&研修会

全埼私幼連、平原会長から四ッ釜会長へバトンタッチ

初日研修は「発達障害」と「異業種経営論」

2014年7月10日
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四ツ釜雅彦(よつかま・まさひこ)

四ツ釜雅彦(よつかま・まさひこ)
(公社)全埼玉私立幼稚園連合会会長。全日私幼連広報委員長。久喜市・菖蒲幼稚園園長。高校教師を経て幼稚園の道に。全埼私幼連の教育研究委員長、 副会長などを務めた。

金子保(かねこ・たもつ)

金子保(かねこ・たもつ)
さいたま市教育相談センター所長。元・国際学院埼玉短期大学教授

斉之平伸一(さいのひら・しんいち)
斉之平伸一(さいのひら・しんいち)
三州製菓株式会社代表取締役社長。元・埼玉県教育委員会委員長。1948年生まれ。一橋大学卒。

★新会長に「全国的活躍を」とエール
 (公社)全埼玉私立幼稚園連合会(四ッ釜雅彦会長/略称=全埼私幼連)は5月30・31日、栃木県日光市の鬼怒川温泉「ホテル三日月」で定時総会と設置者・園長研修会を開催した。公益法人制度の改革で全埼私幼連は2014年から公益社団法人に移行した。今回がその第1回総会。これを機にトップが交代し、平原隆秀前会長(春日部成就院幼稚園理事長)から四ッ釜(よつかま)新会長(久喜市・菖蒲幼稚園園長)にバトンが渡された。
 平原前会長は28年にわたって会長を務め、研修事業、出版事業、子育て相談事業などを通じ、埼玉県を日本一活発な組織に育てた人であり、引き続き名誉会長として後見役を務める。その名誉会長からは「会員皆さんのご協力のおかげで長く会長を務めることができた。心から感謝します。そして副会長の中で一番若い方にバトンタッチできた。嬉しいことです。埼玉のリーダーとして頑張ると同時に全国の場でも活躍してほしい。私も一生懸命応援します。みんなでバックアップしましょう」と新会長への協力を呼びかけた。
 期待に応えて全日私幼連の広報委員長も兼任することになった四ッ釜会長は「身の引き締まる思いです。ジェットコースターに乗っているような毎日で目が回りますが、足を踏ん張り、目を見開いて、私立幼稚園の未来を見据えてジェットコースターを乗りこなしていきます。どうかご支援ください」と笑いをとりながら決意を述べた。

★発達障害は笑いと経験で改善する
 事業報告・同計画、収支決算・同予算などを審議決定して総会は研修会に変わった。トップバッターは全埼私幼連の子育て相談事業を育てた一人である金子保氏(さいたま市教育相談センター所長、元・国際学院埼玉短期大学教授)。発達障害の最近の研究について次のようなことを話された。
 「テレビ放送が始まった60年前、発達障害の子はほとんどいなかった。今は1万人に1500人、15%の子どもに障害が見られます。そのための施設は作っても作っても間に合いません。1カ所の維持費は年間5億円。県の財政負担は増えるばかりです。発達障害は先天的な脳の障害で治らないとされていますが、同じ先天的障害の知的障害やダウン症は増えていません。盲学校、聾学校などは数を減らしています。これはおかしなことです。
 発達障害の子は言葉が少なく、笑いがほとんどなく、人と目を合わせません。でも笑わせるように努力するとだんだん目が合ってきます。すると何かを繰り返して自分で面白がる行動が出てきます。さらに人をからかうような行動に発展し、言葉も増えてきます。症状は改善するのです。問題は笑いです。原因は脳でもテレビでもない。乳児期に親があやす行為、つまり“いないいないバー”や“高い高い”の不足です。
 小学校になっても簡単な暗算のできない子に、幼児期によくやるトランプジャンケンをさせてみたら二桁の暗算までできるようになりました。ペットボトルのボーリングも効果的です。転んでも手を突かず顔をケガする子が増えています。でも2歳までにたくさん転んだ子は決してそんなことになりません。発達障害とは3歳までの経験が足りない「前経験欠落症」なのです。
 発達障害のまま超難関大学に合格したりノーベル賞をもらったりする人もいます。でもふだんの日常生活をちゃんとすることができないのです。発達障害を防ぐため乳幼児期の生活と経験を大事にしてください。“三つ子の魂”とは3歳までの経験の大切さを言っているのだと思います」

★社員一人ひとりの判断の幅を広げ
 続いての講師は元・埼玉県教育委員会委員長の斉之平伸一氏(三州製菓株式会社代表取締役)。「新しい時代の教育と経営」と題し、ドイツ、オランダの学校教育を視察して学んだことを企業経営に生かしていることなどを語った。
 春日部市を本拠とする三州製菓は煎餅、あられを主力とする老舗。その名称は創業者(斉之平氏の父親)が鹿児島出身で薩摩、大隅、日向の三州を管轄した島津家にあやかったもの。同社の社員は220人。うち170人が女性。定年のない「生涯現役制」、残業をなくして有休を取りやすくする「一人三役制」などユニークな人事管理で全国に知られ、厚労省のモデル企業になっている。
 斉之平氏が県の教育委員長を務めた頃(2011〜2013)は全国的にいじめ問題が表面化したため、いじめの少ないドイツと子どもの幸福度が高いオランダの学校を視察した。ドイツでは1〜3年生が同じ教室にいて勉強を教え合い、いじめをなくすルールを子どもたち自身で決めていることを知った。またオランダではカリキュラムは子どもが決め、チャイムがないので時間は自分で管理する。やることや目標は先生と子どもが話し合って約束するなどを知った。
 こうした教育技法からヒントを得て自社の経営に取り入れた。社員一人ひとりの判断の幅を広げ、多くの委員会を設けてテーマごとに話し合いで決めていくなど社員の経営者意識を高めた。また毎年1回、お客、社員、仕入先などに対して満足度調査を行っていることなどが紹介され、幼稚園経営者との間で活発な質疑応答も行われた。
 なお二日目は山崎明弘氏(埼玉県総務部学事課長)および田中雅道氏(公益社団法人全日本私立幼稚園幼児教育研究機構理事長)の講演、若手経営者4人からの体験発表が行われたが、この内容は別の記事にまとめて掲載する。

※金子保氏の講演の様子(YouTube動画)
※斉之平伸一氏の講演の様子(YouTube動画)

幼稚園情報センター・片岡進