理事長さんから取引企業の人まで

『認定こども園がみるみるわかる本』

今後の制度改善点(五項目)も指摘

2018年8月8日
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認定こども園がみるみるわかる本

『認定こども園がみるみるわかる本』/小島宏毅著/オンデマンドブック/B6判125頁/1404円(税込)。※この本は注文の都度、印刷・製本・個別発送するPOD方式です。インターネットのアマゾン書店で注文してください。

小島宏毅(こじまこうき)

小島宏毅(こじまこうき)
岐阜県各務原市・学校法人小島学園ひよしようちえん(認定こども園)理事長&園長。1961年生まれ、岐阜県出身。成城大学文芸学部国文科卒。

★私幼経営者の心のドアをノック
 園児の保護者はもちろん、一般の幼稚園教師、体育や英語の講師、取引企業の人達など、日頃幼稚園と深い関わりを持っていながら、「認定こども園はよくわからない」と言う人は多い。幼稚園経営者の中にも、誤解や勘違いをしている人が意外に多い。そんな人達を含め、認定こども園のことをきちんと理解したいと思っている人に、うってつけの本である。
 著者の小島宏毅氏は、両親が設立した幼稚園を若くして引き継ぎ、認定こども園に移行した幼稚園経営者である。論理的に物事を考え、文章をまとめるのも上手な人である。そこで認定こども園に対する世情を見て、居ても立ってもいられず、“究極のわかりやすい解説書”を書こうと筆をとったものと思われる。本の中で小島先生は「子育て中の親御さんに、制度の中身を正しく理解してほしいと願って書いた」としているが、一方では、認定こども園への移行を拒否する私立幼稚園経営者の心のドアをノックする気持ちも現れている。「あなたの幼稚園の将来への道が塞がれてしまうかも知れませんよ」という仲間への心配である。
 本の構成は、第1章が「幼稚園と保育所、そして認定こども園」で、戦後の歴史から新制度に至る経緯がまとめられている。第2章が「すぐわかる新制度〜16のポイント〜」。ここでわからなかった人は、第3章の「20分でわかる〜認定じいさんのスッキリ解説〜」で噛み砕いてくれる形になっている。
 そして第4章の「幼稚園・保育所の未来の選択」が幼稚園経営者へのメッセージである。西洋思想やギリシャ神話的寓話で論を展開している。これには少々違和感があるが、要は視野を広くして時代の流れを見るべし、ということであろう。ただひとつ「おや?」と思うのは、私立幼稚園経営者が認定こども園に抵抗感を持つ素朴な理由が述べられていないことである。それは「午後2時になったらお母さんが迎えに来てくれる。あるいは園バスを降りると、お母さんが待っている。この光景こそ子どもにとっての最善の利益だ。そんな子どもの幸福感を幼稚園が守らなくてどうする」というものである。
 ほとんどの幼稚園が預かり保育を行っている現状では、その考えは「時代錯誤の思い」なのかも知れないが、そんな幸福感の中で健やかに育っている子どもはまだまだ多い。多くの私立幼稚園経営者が、伝統的な“家族の理想”を捨ててしまっては、家庭・地域と連携する幼稚園教育の意味がなくなると考えているのも、また事実である。ただ、この問題を持ち出すと話がややこしくなる。「わかりやすい認定こども園」が「わからない認定こども園」になってしまう恐れがあるので、小島先生はあえて触れなかったのかも知れない。

★子どもの保育認定は不要である
 最後に小島先生は、認定こども園制度の今後の改善点として次の五つをあげている。
㈰こども園運営の自由度を高めること。
㈪4類型は廃止して「こども園」に一本化し、名称は幼稚園、保育所、こども園を自由に選択し、施設の文化風土、設置者の理念が伝わりやすくすること。
㈫保育の必要性をすべての子どもに認め、保育認定は不要とすること。
㈬保育料の設定を、利用日数、利用時間に応じたものにすること。
㈭第三者評価はやめること。
 幼稚園情報センターは、すべて同意である。
 特に小島先生は、認定こども園という言葉に違和感を持っていて、「“認定”の二文字を削って、単にこども園とすべきだ」と繰り返し訴えている。これも大いに同意である。
 国が「こども園」を名称独占できないため、やむを得ない表記になったのだろうが、それなら、実際に使う施設側が、看板から“認定”の二文字を削除すればいい。あるいは、頭に「認定こども園」を付けるのではなく、末尾に小さなカッコ書きで表記すればいい。各園が自分の判断で、そうした行動をとってほしい。そうすれば、小島先生が掲げる五つの改善点に向かって物事はきっと動いていくだろう。そんなことを強く感じた本だった。
幼稚園情報センター 片岡 進